英語は間違っていないのに、誤解されてコミュニケーションの問題が起きてしまうことは日常生活でもあります。それがビジネスの場合なら、まったく意図しないうちに失礼な言葉になって、取引自体に悪影響を及ぼすことさえあります。
日本人が無意識に使っている英語が実は英米人にとっては完全に場違いであったり、日本語的な発想で何気なく言う言葉が彼らに誤解を与えたりすることは少なくありません。
そうした、職場や取引先での会話のTPOに関わる表現をご紹介します。
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1.突然の連絡
よく「突然のご連絡で恐縮ですが」と言います。欧米社会では連絡自体が突然なのはあまり気にしないとも言われますが、連絡の中に依頼が含まれている場合などは、やはり礼儀として一言加えた方がいいですね。
しかし、I’m sorry for getting in touch with you suddenly.とかI’m sorry for a sudden contact.などという言い方は違和感を与えるので、次のような言い回しを使いましょう。
I’m sorry to make this sudden request. 突然依頼してしまい、申し訳ありません。
I’m sorry for an out-of-the-blue request. 思いがけない依頼になって恐縮です。
Out-of-the-blue:思いがけない、突然の
out of the blue(一語でない)は次のように使います。
(例)Out of the blue, John quit the company.
ジョンは突然会社をやめた。
Mr. Suzuki, what do you think? 鈴木さん、どう思いますか?
個別の出席者に意見を求める時の表現。
Let’s all speak one at a time. 1人ずつ話すようにしましょう。
意見が出ないので順番に指名して発言してもらう前に。
2.招待を断る
予定が重なったりして、お招きを断らなければならないことがあります。仮に行きたくないから断る時にも、それを見せずにソフトに断る言い方をしましょう。
Can I have a rain check on it? また別の機会にお誘いいただけますか?
Rain check:またの機会
もとは、試合が中止になったときの「雨天順延券」のこと。
また、断る理由を付け加える時にも注意する点があります。
I wish I could join you, but I have other plans. 本当は行きたいのですが、他に予定が入っています。
これを、I’m sorry, but I have to refuse.などとすると、相手は「絶対いかないぞ!」と言われたように感じます。英語として間違いではありませんが、refuse(きっぱり断る、拒否する)という単語を使うのが問題です。こんなに強い拒絶を表す単語は招待の返事に使うものではありません。
3.しかたありません
「しかたない」というとまず思い浮かぶのがIt can’t be helped.でしょう。しかしこれは本当にお手上げ状態のことなので、あまり安易に使うと英米人からは努力が足りない人だと思われる恐れがある表現です。
日本人でも英米人でも、難しい状況に置かれた時にあきらめずに取り組もうとするのは同じです。桜の国の日本人は潔さを好むので、本当はまだやる気があっても言葉の上では「ダメだな」「しかたないな」と言ってしまいます。ところが英米人は、何が何でもやる気ならそう口に出す人たちです。
彼らにネガティブな印象(誤解)を与えないためには、It can’t be helped.は使わずに、次のような表現を使ってみましょう。
We may have little choice about this matter. これについては選択の余地がありません。
This is a matter outside our control. これは我々の手の及ばないところです。
I don’t think we have much room for handling the situation. この状況に対処する余地はなさそうです。
4.〜させる
「〜させる」を英語にする時、たいていの日本人はまず使役動詞のmakeを使おうとします。たとえば、I will make our employees join the project.(当社の社員をそのプロジェクトに参加させます。)というような場面です。
このような時は次のように言う方が適切です。
I will have the staff of our section join the project. 当部のスタッフにそのプロジェクトに参加させます。
I intend to ask him to research the project. 彼にそのプロジェクトについて調査するように頼むつもりです。
英語のネイティブ・スピーカーにとって、makeの「させる」は完全に上から目線、かつ強制的な表現です。親が自分の子供に何かをさせるという話なら使ってかまいませんが、部下への指示に使うと不自然だと思われます。同じ使役動詞でも、最初の例のhaveを使う場合にはそうではなく、「〜してもらう」というニュアンスになります。
部下なら上からでいいではないか、と思うかもしれませんが、仕事の上限関係は人間としての平等に優先しないので、仮に社長が自分の会社の社員に何かをさせるという場合でも、makeは使うべきではありません。
2つ目の文のaskならば「お願いする・依頼する」という意味になるのでさらに柔らかい印象になります。
5.部下をほめる
言い方に気をつけた方がいいのは、対外的な会話だけではありません。海外勤務で現地の部下の仕事をほめたり、お礼を言ったりする時に、気が付かずに失礼な言い方になってしまうことがあります。
典型的な例が、”(You did a) good job!”。これはおすすめできません。次のようにきちんと言いましょう。
It helped me a lot when you wrote the sales report. 売上報告書を作ってくれて、とても助かりました。
Your hard work was a great contribution. あなたの努力がすばらしい貢献をしてくれました。
Good jobというのはあまりにカジュアル過ぎて、小さな子供をほめるような時にも使うものなので、軽々しい響きになって感謝の気持ちが伝わりません。また、ほめたり感謝の気持ちを表したりする時には、その人がしたことに具体的に触れることが大切です。
いかがでしょうか。英語がかなり話せる方でも、意外と使っていた不適切な表現があったのではないでしょうか。言葉の壁がビジネスの障害になるということをよく言われますが、その何割かは「言いたいことが伝わらない」のではなく、こうした表現上の問題によって起きています。
こういうことは単にていねいに話すということとは少し違いますし、とり立てて難しい単語を使う必要はありません。しなくてもいい苦い経験をしないで済むためには、こうした点も意識して英語を勉強するようにしてください。