アメリカ合衆国憲法を読むの6回目です。
今回は第三章第一条「司法権」、第ニ条「司法権の及ぶ範囲」および第三条「反逆罪」についてです。
第三章 第一条「司法権」
Article. III. Section. 1. 第三章 第一条 The judicial Power of the United States, shall be vested in one supreme Court, and in such inferior Courts as the Congress may from time to time ordain and establish. 合衆国の司法権はひとつの最高裁判所、及び連邦議会が随時制定し設立する下級裁判所に属する。
– such~as~:as以下の節の目的語がsuchのすぐ後に来ているかたちです。
The Judges, both of the supreme and inferior Courts, shall hold their Offices during good Behaviour, and shall, at stated Times, receive for their Services, a Compensation, which shall not be diminished during their Continuance in Office. 最高裁判所と下級裁判所の裁判官は最善を尽くしている限り職務にとどまり、その間はその職務に対する報酬を受け、在職期間中減額されない。
– good Behaviour:品行方正な、おとなしくしている、よい行い、非行がない、悪事をあたらかない。ただし、この条文における解釈として、lifeあるいはlivingと理解されているようです。つまり生存している限り、身分を保証されているということを意味しています。弾劾された場合はこの限りではありません。
– compensation:報酬。
– diminish:減らす、減額する。
– continuance:継続、職務に留まっていること。
第三章 第ニ条「司法権の及ぶ範囲」
Section. 2. 第二条 The judicial Power shall extend to all Cases, in Law and Equity, arising under this Constitution, the Laws of the United States, and Treaties made, or which shall be made, under their Authority;-to all Cases affecting Ambassadors, other public ministers and Consuls;-to all Cases of admiralty and maritime Jurisdiction;-to Controversies to which the United States shall be a Party;-to Controversies between two or more States;-between a State and Citizens of another State;-between Citizens of different States;-between Citizens of the same State claiming Lands under Grants of different States, and between a State, or the Citizens thereof, and foreign States, Citizens or Subjects. 司法権はこの憲法の、合衆国の法律、またそれらの権限のもとに締結されたあるいはされる条約のもとに生じる、慣習法と衡平法によるすべての訴訟におよぶ。大使その他の外交使節と領事にかかわる争議、海事法、海事裁判権に関するすべての争議、合衆国が一方の当事者である争議、二つの州間の争議、ある州とその他の州民との争議、異なる州の市民の争議、異なる州から移譲された土地についての同州市民間の争議、ある州あるいは市民と外国、外国市民、臣民との争議。
– Law and Equity:lawとは判例法(慣習法)であり、equityとはおおざっぱにいいますと大法官により定められた法(衡平法)のことで、英国の伝統的な2系統の法体系を意味します。ここでは「すべての法令に関する」といった意味と考えられます。
– public ministers:外交使節。
– consul:領事。
– admiralty:海事法、海事裁判。
– maritime:海事の。
– Jurisdiction:司法権、裁判権、管轄権。
– Controversies:論争、議論、争議。
– Subject:君主の下の国民、臣民。
– この項目:後に一部が修正となっています。
In all Cases affecting Ambassadors, other public Ministers and Consuls, and those in which a State shall be Party, the supreme Court shall have original Jurisdiction. In all the other Cases before mentioned, the supreme Court shall have appellate Jurisdiction, both as to Law and Fact, with such Exceptions, and under such Regulations as the Congress shall make. 大使その他の外交使節または領事にかかわるすべての訴訟において、そしてある州が当事者である訴訟においては、最高裁判所が第一審管轄権を有する。その他の前項にあげた訴訟においては、最高裁判所は、法と事実の双方について、連邦議会が定める例外を除きまた規則により、上訴管轄権を有する。
– original Jurisdiction:第一審管轄権。
– appellate Jurisdiction:上訴管轄権。現実にはこの上訴裁判所としての役割がほとんどです。第一審管轄権を有することについての訴訟はほとんどありません。
– both as to Law and Fact:法律上の手続きと事実認定の双方について。
The Trial of all Crimes, except in Cases of Impeachment, shall be by Jury; and such Trial shall be held in the State where the said Crimes shall have been committed; but when not committed within any State, the Trial shall be at such Place or Places as the Congress may by Law have directed. 弾劾の場合を除いて、すべての犯罪に対する審理は陪審員によるものとする。その審理は犯罪の行なわれたとされる州にて行なわれる。州以外の場所における犯罪は、連邦議会が法によって定める場所にて行なわれる。
– trial:裁判、公判、審理。
– crime:法律上の犯罪。
– jury:有罪無罪を評決する陪審員。植民地時代から陪審制の裁判が行なわれていました。しかし陪審員が植民地居住者であり、そのため英国から来ている裁判官や検察官の意に反する判決が出され、英国は陪審員によらない特別裁判所を設置したのでした。このことに対する反発も独立戦争の引き金のひとつとなったのでした。
第三章 第三条「反逆罪」
Section. 3. 第三条 Treason against the United States, shall consist only in levying War against them, or in adhering to their Enemies, giving them Aid and Comfort. No Person shall be convicted of Treason unless on the Testimony of two Witnesses to the same overt Act, or on Confession in open Court. 合衆国への反逆罪は、合衆国への戦争を開始すること、あるいは援助と便宜を与えて敵を支援することによってのみ成立する。同一の公然たる行為について二人の証人の証言、あるいは公開の法廷における自白がなければ、反逆罪の有罪とはならない。
– treason:反逆罪。
– levying:始める。
– adhering:支持する。
– testimony:証言。
– witness:目撃者、証人、証拠、証言。
– overt:明白な、公然と。
– confession:自白、自認。
The Congress shall have Power to declare the Punishment of Treason, but no Attainder of Treason shall work Corruption of Blood, or Forfeiture except during the Life of the Person attainted. 連邦議会は反逆罪への処罰を宣言する。しかし反逆罪による市民権の取り消しは血統汚損とはならない、また市民権を剥奪されたものの生存期間を除いては、財産の没収はなされない。
– attainder:私権喪失、市民権の剥奪。
– corruption of blood:血統汚損。ここでは市民権の取り消しは子孫に及ばないということ、また相続権を剥奪されることはないというです。
– forfeiture:没収、失効、喪失。
まとめ
裁判官の身分保障、司法権の及ぶ範囲、そして反逆罪についての規定でした。
裁判官は終身の身分保障がされていて、公平公正な裁判が行われることが期待されています。犯罪の審理は陪審員によって有罪か無罪が判断されるとしています。一般国民の意識や判断によって、民主的正義にもとづいた裁判がなされるということなのでしょう。
次回は第四章「連邦条項」、第五章「改正」を読んでいきます。