英検とは
みなさんも1度は受けたことがある「英検」、正式名称では「実用英語技能検定」といいます。英検は、公益財団法人日本英語検定協会というところが実施責任団体として運営している検定試験で、文部科学省も後援していることから、国家試験ではないにしても抜群のオフィシャル感が漂っていますね。間違いなく今の日本の英語学習シーンをリードしている試験といってよいでしょう。
英検は毎年1月、6月、10月の年3回実施され、昨今はさらに受験者数が伸びています。2016年度の志願者数はのべ300万人を超えました。大学入試センター試験の志願者数が55万人程度なので、英検のその規模たるや、圧巻です。小学生から社会人までさまざまな年齢層の受験者がいるのも、TOEICなどのビジネス英語試験とは異なる英検ならではの特徴といえます。ニッポンの英語学習者を幅広くカバーしていることになります。
英語「4技能」とは
さて文部科学省の定める小・中・高の学習指導要領に、「外国語」という科目がありますが、実際にほとんどの学生さんが外国語のなかでも「英語」を履修するため、本記事は英語に限って述べたいと思います。
この英語ですが、「読む・聞く・書く・話す」の4技能を高等学校における学習に盛り込み、大学入試においてもこの4技能を問うことが求められています。これまでは「書く」「話す」の2技能が大学入試で問われることは少なく、「読む」「聞く」の入試問題が中心でした。(読むのがほとんどで聞くのは少しだけである、ということを揶揄して「1.5技能試験」なんて言われ方もしていました。)いよいよ入試でも英作文力や英会話力が問われる時代に突入したわけですが、全大学で一斉スタートというのは難しく、対応できる大学から対応しているというのが現状です。
英検は本格的に4技能化に着手
2020年の東京オリンピック/パラリンピック開催を控え、ますます国全体の英語力の底上げが必要となっている今、英検は動きました。2017年度第1回試験(6月実施)より、英検3級と英検準2級にも英作文問題が加わったのです。学校の勉強をなんとなくやっていれば、英検にもなんとなく受かる…というお手軽な感じは、もはや過去のものとなりました。しっかり英検用の対策時間を設けないと、ぶっつけ本番で英作文を攻略するのはなかなか難しいといえます。
もともと英検は二次試験に面接がある試験なので、この面接試験でスピーキング力は問われていました。今回この英作文問題導入によって、英検は4技能すべてを問う試験に変わったということです。(なお下位級の4級と5級については、2017年11月時点でまだ英作文問題は導入されておらず、面接試験も希望者のみwebサイト上で実施なので、これらの級は2技能試験です。)
いずれにしても英検受検者層のボリュームゾーンである3級と準2級が完全4技能化したことで、世の中に与える影響は極めて大きいといえます。しっかり書く練習を積んで試験に臨む学習者が増えれば、間違いなく日本人全体の英語力UPに貢献することでしょう。頭の中で英文を作り上げていくことは、スピーキング力にも直結します。それこそが、英検リニューアルの真の目的ともいえます。
英検上位級も、さらに運用力UPを目指した試験に
さて、2級・準1級・1級にはもともと英作文問題が出題されており、さらに二次試験の面接もあるため、昔から4技能試験としての役割はきちんと果たしていました。ところがこれらの級の英作文問題にも若干の形式変更があり、指定語数が長くなったのと、条件付きになり複雑化したことで、間違いなく「難化」したといえます。世界でしっかり通用する英語力と論理力を身につけてもらいたい、という英検協会の愛のムチなのでしょう。
【NEWS① 英作文新規導入の英検3級】どんな英作文問題が出るの?
肝心の問題の内容ですが、3級であれば「25~35語」で質問に対する自分の答えを書きます。出題されるのは「Which do you like better, staying home or playing at outside?」(2017年度第2回)といった5W1Hで始まる質問文です。
答える際には理由を2つ述べることも求められているので、なんとか語数を達成しようと関係のない情報を入れても、思うように点数は伸びないと思ったほうがよいでしょう。求められているのは理由2つであることをきちんと理解し、シンプルな表現でも「なぜこう考えるのか」を2つ必ず述べましょう。「Staying at home makes me relaxed.」などのように簡潔な文を2つほど入れ込めば、あとは開始文と結論文のパターンで乗り切ってしまえるのです。指定の25語以上を達成するこはそんなに難しくはありません。
【NEWS② 英作文新規導入の英検準2級】どんな英作文問題が出るの?
続いて準2級では、「Do you think it is important for children to play sports?」(2017年度第2回) といったYesかNoで答える形式の質問文が出ます。3級に比べて英単語や表現じたいも難しくなりますし、さらに受験者の認知のレベルも3級より上のものと想定しての出題ですので、個人的な好き嫌いではなく、社会に目を向けた広い視野でのテーマが取り上げられます。
答える際には、3級と同じように理由2つを交えて、こちらでは「50~60語」で自分の意見を書くことが求められます。例えばこの質問文であれば、答えの第一文に「I think…」や「I don’t think…」という自分の意見をずばり簡潔に示す文を書き、あとは理由を2つ詳しく述べる、という英作文に仕上げるのが正解です。結論を先に短く述べ、詳しい情報はあとから、という英語らしい論理展開に慣れる練習として英検の英作文対策はとてもよいでしょう。
【NEWS③ 英作文で問われているのは英語力と論理力】
ここで1つ重要なことは、英語力だけで立ち向かおうとしないことです。英語だけでなく日本語でもそうなのですが、往々にして「書く」「話す」の試験は、言語としての運用能力とセットで、受験者の「認知」や「論理力」を問うてきます。
当たり前のことですが、自分の書いている英作文の内容が設問で求めれているものと合致しているかどうかは、解答文作成中に常にふりかえるべきポイントです。ここを強く認識しないと、書いているうちにどんどん書きたかったこととずれていってしまうという落とし穴が待っています。試験中は時間との戦いとうこともあり、なかなか冷静にはなれないものです。書き始める前に一呼吸置いて、頭の中でどう話を展開するかをひとりで「作戦会議」するのが高得点ゲットへの近道です。1分でも2分でもこの短い時間をあえて設けることで、論理の破たんを防ぐことができます。
どんなに優れた英語表現であっても書くべき内容が完全にずれてしまうと、問題冊子中の注意喚起文に「0点となる場合もあります」とあるとおり、悲惨な結果になりかねません。語数達成のために躍起になってあれこれ書きつけるより、短くても求められたことをきちんと書いてあるほうが採点者には好印象です。仮に2~3語足りなくても、読みやすくすっきりしているほうが明らかによい英作文だといえます。
また「理由を2つ書く」ことについても、わかりやすくFirst, …. Second,…と接続表現を入れると非常にクリアに自分の論理が相手に伝わります。これらの表現を使わないと、よほどの英語の書き手でない限りは「理由1と理由2の区切り」を正確に伝えることができないものなのです。
あるいは、2つ目の理由を述べているつもりで、1つ目の理由との近似性が高いならば、理由が2つ述べてあるとはみなされません。この論理展開は、日本人は特に訓練によって慣れていく必要があります。「先に結論を言って、細かい説明はあとから、そして念押しでもう一度結論にさらっと触れる」論法は、世界のビジネスシーンで必要な技術です。
一生ものの英語力を英検対策でゲットせよ
上のような理由から、英検の英作文対策は将来のグローバル・ビジネスパーソンとしての素養も培ってくれます。さらに従来の面接試験対策もぬかりなく行えば、少しずつ自然に英語が話せるようになっていきます。海外留学だったり外国人家庭教師だったり、特別な勉強環境に恵まれなくても、しっかり英検に取り組めば間違いなく英語力は「総合的に」身に付きます。せっかくですから、この完全4技能化された英検の変化の波に乗ってしまいましょう!
皆さんの書く力・話す力が、英検対策中にグーン!と伸びますように。