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ヴァン・ゴッホの「耳切り事件」に新発見

オランダの画家ゴッホが、友人の画家ゴーギャンとの共同生活中に自分の耳たぶを切り落としたという、いわゆる「耳切り事件」について、通説をくつがえす発見がありました。英語を勉強しながら真相を探ってみましょう。(英文は、“Vincent Van Gogh ‘gave ear to farmer’s daughter'”, BBC News 2016/7/20)

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The young woman to whom Vincent Van Gogh gave his severed ear has been named as Gabrielle Berlatier.
 ヴィンセント・ヴァン・ゴッホが切り取った自分の耳を渡した若い女性の名前は、ガブリエル・ベルラティエだと判明した。

(単語チェック)
severed:(断ち)切った《過去形》
 アクセントは最初にあります。(ヴァ)
name:〜の名前を挙げる《過去分詞》
 nameは動詞で「〜に名前をつける」。
 name 〜 as A(〜にAという名前をつける)の形で良く使われます。また
  He named his son after his grandfather.
   彼は自分の息子に祖父の名前をつけた。
 というname 〜 after A(〜にAにちなんで名づける)の形もよく出ます。

  
ゴッホの名前の日本語表記は、昔は「ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ」でした。これは英語読みなので今回はこれを使いましたが、最近多いのは「フィンセント・ファン・ゴッホ」です。

これは展覧会や書物でよく使われますが、実は発音がオランダ語に近いドイツ語での読み方です。では原語のオランダ語ではどうかというと、「フィンセント・ファン・ホッホ」。(オランダ旅行の時の現地ガイドも言っていました。)

最近の日本では原語に近い発音・表記が推奨されていますが、さすがに、その筋の権威で今さら「ホッホ」にと呼ぶ勇気のある人はいないようです。ということで、落とし所がドイツ語読みになっているのでしょう。

The Art Newspaper tracked down the farmer's daughter's full name after a new book on the artist referred to the woman.
 『アート・ニュースペーパー』誌は、ゴッホに関して新たに発行された書籍がこの女性について触れていることを受けて、農家の娘であるその女性の名前を突き止めた。

(単語チェック)
The Art Newspaper:(イギリスの美術館・博物館の専門月刊紙)
tracked down:見つけ出した《過去形》
 trackは「追跡する」なので調査・取材の結果見つけたという意味です。
referred to:言及された《過去形》

7月に出版された「ヴァン・ゴッホの耳の真実」という本には、いくつかの新発見が明らかにされていましたが、その中でまず注目を集めたのは、ゴッホの耳の切り方でした。

☆ 耳全体を切断していた

The discovery of her name comes after it was suggested Van Gogh cut off his entire ear, rather than part of it.
 彼女の名前がわかったのは、この本で、ヴァン・ゴッホは耳の一部ではなく片耳全体を切り落としたと指摘したのがきっかけだった。

(単語チェック)
cut off:切り落とす、切り取る
 cutだけだと、切断すること以外に切りつける、切れ目を入れるという意味もあります。
cut offだと、offが「分離」の意味を表すので切り取ってしまったことがはっきりします。

従来は、ゴッホが自分の耳たぶを切り取って、ラシェル(フランス人)という娼婦に「これを大切にしまっておきなさい」と言って渡したと考えられていました。

ところがこの本で「ラシェルは娼婦ではなかった」と書かれていたのに注目した『アート・ニュースペーパー』誌が、この女性について詳しく調べたところ、新たにガブリエルの存在が浮かんできました。彼女の名前はパリの病院の受診者名簿の中で発見されました。この事件より前に、犬にかまれたのがもとで狂犬病になり、治療を受けていた女性が、彼女と同一人物と判明したのです。

Gabrielle was working as a maid in a brothel when she was given the strange gift, according to the new research.
 ガブリエルは売春宿のメイドとして働いていた時に、その奇妙な贈り物を受け取ったということが、新しい調査でわかった。

(単語チェック)
brothel:売春宿、娼家
 

『アート・ニュースペーパー』誌の記事はゴッホ研究の専門家マーティン・ベイリー氏が書いたものですが、ベイリー氏は、この女性の名前がわかったことで「ヴァン・ゴッホに関する多くの謎の1つが解けた」と論評しています。

"I was very intrigued to see the book and that there were enough clues in it to enable me to track down the name."
 「私はこの本を読んでとても好奇心をそそられた。またこの本の中にはその女性の名前を明らかにできる手がかりが十分含まれている点でも大変興味深かった。」

(単語チェック)
intrigued:興味をそそられて《過去分詞》
 intrigueは「(人)の興味をひきつける、好奇心をそそる」
  Facts intrigue me.
   私は事実に興味がある。
 この文では「be intrigued to 不定詞」と「be intrigued that …」の形ですが、普通にbyを使った受動態の形にもなります。
clues:手がかり、きっかけ《複数形》
 

ガブリエルの名前は他の資料にも出てきていたので、それ自体はベイリー氏にとって全くの発見ではなかったようですが、耳を渡したのが彼女だと特定できたことで、今後「耳切り事件」についてさらに新しい発見があるかもしれないと述べています。

☆ ガブリエルとの関係は?

Gabrielle’s first name had been revealed in 1936 in an article quoting the policeman called to the brothel in Arles where Van Gogh sliced off his ear in 1888, but newspaper reports at the time called her Rachel, which may have been a nickname.
 ガブリエルという名前は1936年にすでに記録がある。これはゴッホが1888年に耳切り事件を起こしたアルルの売春宿と連絡をとった警察官の発言を引用した新聞記事だ。しかしその記事では女性を「ラシェル」としていた。これはニックネームだった可能性がある。

(単語チェック)
revealed:明らかにされた《過去分詞》
quoting:引用する《現在分詞》
sliced off:切り取る、そぎ落とす《過去形》

ベイリー氏は記事の中で、ガブリエルはゴッホの友人が経営していた宿屋の清掃係をしていた可能性があると書いています。そしてゴッホはそこに何ヶ月も滞在していました。

そのため、彼女と毎日のように顔を合わせていたとすると、2人の関係についてさらに興味深い事実があるかもしれないということです。この仮説に、世界中のゴッホ研究者たちが一気に盛り上がっています。

The painter cut off his ear after suffering a mental breakdown. He was found alive by police the next day and taken to hospital. Van Gogh took his own life in 1890.
 ゴッホは精神に異常をきたした末、自分の耳を切り落とした。彼は一命を取りとめ、翌日発見した警察によって病院に搬送された。ヴァン・ゴッホは1890年に自殺して生涯を閉じた。

(単語チェック)
breakdown:(心身の)衰弱、(健康状態の)破綻
taken to:〜に連れて行かれて《過去分詞》
took his own life:自殺した《過去形》

いかがでしたか?
これからも日本でたびたび「ゴッホ展」が開かれるでしょう。もし足を運んだ時に覚えていたら、この「耳切り事件」についてどんな風に書かれているか、チェックしてみてくだいね。

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