日本語には敬語の細かいルールがあります。きちんと使えるかどうかは別として、「目上」「上司」「お世話になった方」などは意識するものですが、英語を話す時はどうですか?
気がつかないうちに、相手がビックリするような言い方をしているとしたら、コミュニケーションに大きなマイナスですね。特に何かを頼んだり許可を求めたりするばあいには、その言い方は大切です。
今回は、仕事の場面での英語での丁寧な表現について、まとめてみました。
頼みごとをする場合
職場で丁寧な言い方を考えるのは、お客様に対する場合は当然ですが、部下が上司に対する場合など、相手との上下関係(自分が下)が関わってきます。ただ、何かを頼む時に丁寧な言い方が必要なのは、そうした人間関係だけによるものではなくもう少し複雑で、次のような要素があります。
(1)相手との上下関係
年齢や地位が上の相手 > 年齢や地位が下の相手 (左の方が丁寧)
(2)相手との親しさ
知らない相手 > 親しい相手
(3)頼む内容の難しさ
難しいこと、手のかかること > 簡単なこと
(4)頼む内容の緊急度
時間的に余裕がないこと > 時間的に余裕があること
たとえば、次の会話では上下関係と難易度がからんでいます。2つの会話の「boss(上司)」の英語に注目して比べてみてください。
(会話1) boss: Will you send this document to Mr.Green by mail? staff: Certainly. 上司:この書類をグリーンさんに郵送してください。 部下:かしこまりました。
(会話2) boss: Kate, I have to finish my presentation materials for tomorrow. Would it be possible for you to work overtime and help me make some documents? staff: Yes, sure. boss: Oh, thank you so much. 上司:ケイト、明日のプレゼンの資料を仕上げないといけないのです。今日残業して書類を作るのを手伝ってもらえませんか? 部下:はい、わかりました。 上司:どうもありがとう。
(単語チェック)
materials:資料
work overtime:残業する、時間外で働く
(会話1)は、ごく普通の頼みごとで特に緊急性が高いわけではないので、一般的な依頼の “Will you 〜?” を使っています。
これに対して(会話2)では、「明日のプレゼンのために今日中に作業する」「プレゼン資料を作る」ということで、緊急性も難易度も上がっています。このため、依頼のしかたも “Would it be possible 〜?” とずっと丁寧になっています。
上司から部下への頼みごとといっても、このように緊急性や難易度によって言い方は変わってくるというわけです。
また、(会話2)では最初になぜ頼むかという状況を説明しています。このように表現以外の部分でも、丁寧に頼む気持ちを表すことができます。
許可を求める場合
頼みごとと違って、許可を求めるのは基本的に部下から上司という「下→上」の関係になります。ただし、「同僚同士」の関係でも、一方から他方に決定を委ねることがあります。
許可を求める場合には、丁寧さの度合いに3つの段階があることを覚えておきましょう。丁寧さが低い順に挙げると、次のようになります。
(1)Can I 〜?
(2)May I 〜?
Could I 〜?
Is it possible to 〜?
(3)Would it be possible to 〜?
I wondered if I could 〜
Do you think I could 〜?
たとえば来週休みを取りたいので許可を求める場合を例にとると、
(1)Can I take a day off next week? 来週1日休みを取ってもいいですか?
Can I 〜? もMay I 〜? も「許可を求める表現」の最初に出てきますが、丁寧さの度合いはCan I 〜? の方が少し低くなります。
May I 〜? は、相手に対して純粋に「許可を得る」と言う気持ちの「~してもいいですか?」ですが、Can I 〜? は、相手に対して「自分がすることができる範囲」を尋ねる気持ちの「~してもいいですか?」という意味になります。
そのため、May I 〜? は相手に完全に判断を委ねていますが、Can I 〜? は少し客観的な部分を含む分だけ自分寄りになるため、Can I 〜? は丁寧さが少し低くなります。これは主に親しい間柄、ビジネスなら同僚間で使うのがいいでしょう。
(単語チェック)
take/have a day off:1日休みを取る
「離陸する」などのtake offではなく、take + a day offで、offは「休みの」という意味の形容詞です。応用編で代休のケースを見てみましょう。
I'm taking the day off tomorrow to make up for last Saturday. 明日は先週の土曜日の代休を取ります。
さて、丁寧に言いたい時は、(2)(3)のグループから選びましょう。
(2)May I take a day off next week?
Could I take a day off next week?
Is it possible for me to take a day off next week?
May I 〜? は先ほど説明したとおりです。Could I 〜? はCan I 〜? の過去形ですが、ここでは、
「同じことを言うなら現在形より過去形の方が丁寧」
がポイントです。これは一言で言うと、「現実との距離感が生まれるので、ストレートな響きを緩和する」ということです。同じことは、何か手伝ってもらいたい時の
A) I want you to help me. 手伝ってもらいたいのですが。 B) I wanted you to help me. 手伝ってもらえればと思っていたのですが。
との違いにも表れています。AよりもBの方が柔らかい感じがします。日本でも、お店などに行くと「〜でよろしかったですか?」と言われることがありますが、これも似た感じかもしれません。(関東では比較的最近ですが、名古屋あたりでは昔から言っていたようですね。)
このグループの3つはほぼ同程度の丁寧さですが、Could I possibly 〜? とするともう少し丁寧になります。
(3)Would it be possible for me to take a day off next week?
I wonder if I could take a day off next week.
Do you think I could take a day off next week?
Would it be possible 〜? は(2)の一番最後のIs it possible 〜? をより丁寧に言う形ですが、これは過去形Was itではなく仮定法過去のWould it beを使うのが普通なのでこちらを覚えてください。
I wonder if 〜 にはさらに段階があり、下に行くほど丁寧になります。
(現在形→過去形→過去進行形)
I wonder if I could take a day off next week.
I wondered if I could take a day off next week.
I was wondering if I could take a day off next week.
最後のDo you think 〜? は「相手がどう思うか?」ということを尋ねる形です。これも含め、このグループの特徴は、言い方を間接的にすることでさらに丁寧さを増していることですが、おすすめはWould it be possible 〜? とI wonder if 〜 です。
頼みごとをする時、許可を求める時の丁寧さの考え方と代表的な表現について理解していただけたでしょうか?
なお、頼みごとをする時に許可を求める言い方を使っても大丈夫です。むしろその方が英米人は丁寧な気持ちを感じるので、頭の片隅にとどめておいてくださいね。