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「ガッツポーズ」って英語で何て言うの?

日本語の中でカタカナ表記されている言葉の中には、(1)英語の表現そのままのもの、(2)いわゆる「和製英語」、(3)原語を省略したもの、(4)そもそも英語起源ではないものなどいろいろあります。

(1)はたいてい英米人に通じますが、まったく違う意味で使っている場合は当然通じません。(2)から(4)はまったく通じない可能性が高いので要注意です。

このように要注意のカタカナ語ですが、今回はふだんよく使われる5つの日本語(カタカナ語)をとり上げて、英語でどう言えばいいかご紹介します。

ガッツポーズ

今年はリオオリンピック。日本の選手が良い成績を挙げて、テレビのアナウンサーが「ガッツポーズが出ました!」という場面がたくさん見られるといいですね。

gutsという言葉は英語にあって、日本語と同じように気力や根性という意味を表します。しかし「ガッツポーズ」となると和製英語で、これが使われ始めたのは1970年代からと言われています。

では、「ガッツポーズをする」を英語で表してみると、

raise one’s fist in triumph
(勝ち誇って拳を突き上げる)

ということになります。triumphは「大勝利、制服」のことです。(ちなみにスイスに本社がある女性用下着メーカーの「トリンプ」もTriumphです。)

gutsを辞書で調べると、見出し語はgutです。
動詞としては「(動物の)内蔵を取る」ですが、名詞としても「消化管、胃腸」、そして複数形のgutsが「はらわた、内蔵」の意味で使われることがわかります。この名詞の用法が「勇気」「根性」に転じたものです。

これを「ガッツポーズをする」に使ってみましょう。

The moment he hit the ball He raised his fist in triumph. He knew it was a homer.
 彼は打った瞬間ガッツポーズをした。ホームランだと確信していたのだ。

なお、ここに出てくるhomerは「ホームラン」ですが、home runも正しい英語です。少しややこしくなりますが、「ホームランバッター」はhome run hitterで、home run batterとは言いません。ところがbatter自体は「打者、バッター」という意味で使われます。

ノルマ

ノルマはの語源はロシア語で仕事の割当という意味のnormaで、英語のnormではありません。英語のnormは「基準、標準」という意味ですが、ロシア語のnormaが「労働の基準量」だと考えるとつながってくるので、normの連想は当たらずとも遠からずです。

英語のnormが「ノルマ」と違うのは「量」という意味がないという点です。

Wearing a suit and tie is the norm at my company.
 スーツを着てネクタイを締めるのは当社では当たり前です。

このように、あくまで性質的なものを指すのがnormです。

ノルマの「割り当てられた」の意味を表すには、assignment(学校の宿題・課題のこともこう言います)、assigned work/taskというように、動詞assign名詞assignmentを使うといいでしょう。「私はノルマを果たした」ならば

I finished my assignment.
または
I completed the work assigned to me.

という言い方になります。
一方、「量」に着目するとquota(割当量)という単語があります。これは国の間の貿易での割当などに使われるのが一般的ですが、工場や部門に割り当てられた

 output quota(生産割当)
 sales quota(販売割当)

のようなものをノルマと考えれば、これが適切となる文脈もあるでしょう。

モード

休暇明けで「仕事モードに入った」というような時の「モード」の語源は英語のmodeですが、この場合の日本語の「モード」は「気分、状態」といった意味です。

コレに対して英語のmodeの本来の意味は機械などについて、ある特定の動作ができる状態のことで、

Please boot Windows in safe mode.
 ウィンドウズをセーフモードで起動して下さい。

のような場合に使います。

日本語で我々が使う「モード」を表すには、気分や気構えを表す英語であるframe of mindmoodを使います。これらを使えば

I have to get back into a working frame of mind.
 仕事モードにもどらないといけない。
He's completely in a mood to work.
 彼は完全に仕事モードだ。

その他に、feel like 〜ing(〜したい気分)や、be ready to 〜(〜する準備ができて)、be prepared to 〜(〜する準備/覚悟ができて)を使うこともできます。

また、

You look exhausted, don't you?
 お疲れモードだね。

のように、「モード」に相当する単語を使わずに、日本語の意味を表す気持ちを英語に言うことはできます。

最後に、modeは本来違う場面で使うと書きましたが、あてはまる場合もあります。たとえば

Both of them are in row mode.
 2人ともけんかモードだ。

のように比喩的に使われることもあり、また

Students have got into job-hunting mode.
 学生は就活モードに入った。

という例のように、modeを使っても自然な例も中にはあります。

リフォーム

「最近家をリフォームしました」「キッチンをリフォームしたら使いやすくなってハッピー!」などとふつうに使っていますが、こうした改築・模様替え、さらに着るものの仕立直しなどに使う「リフォーム」は和製英語です。

英語reformの本来の意味は、悪い行いや政治・社会の腐敗などを正しい方向に変えることなので、構造改革(structural reform)、政治改革(political reform)、宗教改革(religious reform)といった場面で使います。

では、日本語のリフォームに当たる英語の言い方ですが、これは「形を変える、作り変える」対象となるものによって単語を選ぶ必要があります。

The opening of the mall has prompted renovations of neighboring stores.
 そのショッピングセンターができるので、近隣の店舗はリフォームを始めた。

この「リフォーム」に当たるrenovationは改装することですね。また、

I'm so happy with the refurbished kitchen.
 リフォームした台所にとても満足しています。

refurbishは「一新する、改装する」という意味で、これもよく使います。

衣服を仕立て直す(手直しする)場合には、

I got my dress altered.
 ドレスをリフォームした。
He made over an old coat.
 彼は古いコートを仕立て直した。

といった動詞を使うことができます。

タイミング

最後は、完全に日本語化している「タイミング」を考えてみましょう。

英語のtimingは「最も好都合な時間を選択すること(またはその能力)」という意味で、これは日本語に近いですが、実際には日本語のタイミングをtimingと言ってしまうと適切でない場合もかなりあります。

The exhibition is held at a very opportune time.
 この展示会はとても良いタイミングで開かれる。

これは「とても良い時に」ということなので、in good timingのようには言わず、timeを使うようにします。

We'll circulate the minutes without delay and in a timely fashion.
 議事録は遅くならないようにタイミングよく回覧します。

これなどは、in a timely fashion(タイムリーに、時機を逃さず)という表現が「タイミングよく」にピッタリですのでぜひ覚えてください。これに比べたら、ここでgood timingを使うといかにも日本語的に思えませんか?

The Prime Minister began to look for the right time to resolve the Diet.
 首相は国会を解散するタイミングを探り始めた。

安倍内閣の麻生副総理兼財務相は、首相時代に衆議院の解散を考えていた時にリーマン・ショックが起こり、完全に機を逸した結果自民党は選挙で大敗しました。

この場合の「タイミング」も「正しい(適切な)時期」という意味なのでright timeというのが適切で、「選ぶこと」という意味のtimingではありません。

日本語と英語とで違うものだけでなく、英語として使って良い場合についてもご紹介しましたが、いかがでしたか?

通じないカタカナ語をうっかり使わないようにしたいものですが、こうした日本語を見た時に「英語でも使えるの?」と考えてみると、表現を増やす良い機会になります。ぜひ日ごろからチェックしてみてください!

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