アメリカ大陸を開拓したヨーロッパ人は、先住民の間に「5つの性」という考え方があることに驚きました。キリスト教徒の彼らはどう対処したのでしょうか?トランスジェンダーにつながる話題を、英語で読んでみましょう。
(英文は、”Before European Christians Forced Gender Roles, Native Americans Acknowledged 5 Genders”, Bipartisanreport.com)
It wasn't until Europeans took over North America that natives adopted the ideas of gender roles. For Native Americans, there was no set of rules that men and women had to abide by in order to be considered a “normal” member of their tribe. 北米大陸では、ヨーロッパ人が支配するまで先住民の間にジェンダーロール(性別の役割)という考えはなかった。アメリカ先住民にとっては、種族の中で「普通の」男や女として扱われるために守るべき社会の物差しなどなかった。
(単語チェック)
It wasn’t until 〜 that・・
not until 〜 that ・・は「〜するまでは・・しない」「〜して初めて・・する」
took over:支配した
take over(占領する、併合する)の過去形
natives:先住民
adopted:取り入れた
adopt(採用する、[習慣などを]身に付ける)の過去形
gender:性
gender roles:男女の性別による役割、ジェンダーロール
社会の中で「男とはこうあるべき」「女とはこうあるべき」という性的な役割があるという考え方です。
Native Americans:アメリカ先住民
かつて一般的だった「アメリカ・インディアン」は先住民の大半を占める民族です。
set of rules:ルールの物差し、一連の規則
abide by:(規則など)に従う
He feels no need to abide by the law as long as nobody is watching.
彼は誰も見ていなければ法律を守る必要を感じないという人だ。
tribe:種族
◆take over
今回の記事では(4)の使い方ですが、(1)〜(3)とイメージが共通します。
(1)(人に代わって)引き受ける
When I became ill, my son took over the shopping and cooking. 私が病気になった時、息子が買い物と料理を引き受けてくれた。
(2)(人から)引き継ぐ
John took over the company from his grandfather in April. ジョンは4月に祖父から会社を引き継いだ。
(3)(〜に)取って代わる、優勢になる
After World War II, the USA took over from the UK as the West's dominant power. 第二次大戦後、アメリカがイギリスに代わって西側の最強国となった。
(4)(〜を)占領する、(〜の)支配権を握る
A group of generals took over the government. 将軍の一団が政府を乗っ取った(支配下に収めた)。
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☆ 5つの「性」
According to Indian Country Today, all native communities acknowledged the following gender roles: “Female, male, Two Spirit female, Two Spirit male and Transgendered.” 「インディアン・カントリー・トゥデイ」紙によれば、先住民の社会では次のような区別があるとされていた。「女性、男性、トゥースピリットの女性、トゥースピリットの男性、トランスジェンダー」だ。
(単語チェック)
acknowledged:〜という考えだった
acknowledge(〜を事実だと認める、認識する)の過去形
two spirit:2つの精神を持つ人、
「2つの魂(を持つ人)」とは、先住民の社会では「様々なジェンダーロールを生きている人」のことです。
transgendered:トランスジェンダーの
名詞transgender(トランス・ジェンダー)は、生まれ持った性別と心の性が一致しないことから、反対の性で生きようとする人。ここでは -edがついて形容詞になっています。
トゥースピリットは、アメリカ、カナダの先住民の間では歴史的に認められてきた性で、
自分の体に「女性の魂と男性の魂が同時にある」と感じている人や、一般的に「男らしい男」「女らしい女」というのとは違った、男らしさ・女らしさをを持つ人と考えられています。
トゥースピリットの人々は、ある時は女性の格好、ある時は男性の格好をして生活する人もいました。彼らは先住民社会では決してマイノリティではないばかりか、むしろ尊敬される存在として、さまざまな社会的役割をになっていました。
たとえば信仰療法を行う人、伝説や歌を口承する人、予言者、名付け親になる人、結婚の仲介をする人には、こうしたトゥースピリットの人が選ばれていました。
また、親が自分の子供に性別を押し付けることはなく、その表れとして子供の服装は、普通の男女の感覚から見るとどちらともつかないものでした。
☆ 隠し、絶滅すべき対象
The "Two Spirit" culture of Native Americans was one of the first things that Europeans worked to destroy and cover up. According to people like American artist George Catlin, the Two Spirit tradition had to be eradicated before it could go into history books. アメリカ先住民の「トゥースピリット」の文化は、ヨーロッパ人たちが最初に破壊し、隠そうとしたものの1つだった。アメリカの画家ジョージ・カトリンのような人たちによれば、ヨーロッパ人にとってトゥースピリットの伝統は、歴史に残る前に絶滅させなければならないものだった。
(単語チェック)
cover up:隠す、隠ぺいする
eradicated:全滅させられて
eradicate(全滅させる、根絶する)の過去分詞
性に多様性があるという文化は、神がアダムとイブを作られたというキリスト教の価値観に収まりません。ヨーロッパ人はこうした先住民の文化に驚き、また許すことができなかったため、歴史から葬ってしまうことにしました。
そして支配される立場となった先住民に、男女どちらかの性を外見・内面の両方で選ぶことを強制したため、それに従えない先住民は発見されないように隠れて暮らしたり、命を絶ったりすることとなりました。
しかし結局ヨーロッパ人の試みは失敗に終わり、トゥースピリットの文化があったことはもう隠せない事実です。
動物的な性別にとらわれず、自分の思うままに生きられる文化が、アメリカ先住民の中にはありました。これは決して恥でも罪でもなく、なりたい自分になれるという文化です。
人間が本当に自由な世界というのは、こうしたものかもしれません。