西欧諸国で乗用車の半分以上を占めるディーゼルエンジンに装備された、排出ガスの軽減装置が機能していないことがわかりました。日本の燃費データ偽装問題にもつながる話ですが、英語表現をチェックしながら読んでみましょう。
(英文は、”Diesels more polluting below 18C, research suggests”, 2016/6/22)
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☆ 18℃未満で汚染が急激に悪化
ディーゼル自動車(以下「ディーゼル車」)からの排出ガスによる空気汚染が、外気温が摂氏18度未満になると急激に悪化することが、調査により明らかになりました。
Testing company Emissions Analytics told the BBC it has measured a significant rise in poisonous gas emissions from a wide range of models as the temperature drops. 分析会社「エミッション・アナリティクス」社がBBCに語ったところによれば、気温が下がるに従って、幅広い車種で有害な排出ガスの値が大幅に上昇することが測定された。
(単語チェック)
testing company:分析(を専門とする)会社
measured:〜を測定した
significant:大幅な、著しい
本来の「重要な、重大な」から派生した意味ですが、これもよく使われます。
poisonous:有害な
emission:排出物
emission(排出、放出)の複数形は「排出物、放出物」の意味になります。
temperature:温度、気温
エミッション・アナリティクス社は、自動車の燃費や排気ガスの分析では権威のある企業で、この試験は、自動車メーカー31社の213車種について行われました。その結果、2011年にヨーロッパで全ての新型車に義務付けられた「ユーロ5規制」に適合する自動車では、この傾向が最も顕著に現れているということです。
ところがそれは自動車メーカーが欠陥車を作ったり、最近の日本での事件のように虚偽の報告をしたりということではありません。完全に法規制に合った自動車を試験したところ、問題が発見されたのです。
☆ 「完全に合法的な仕様」を利用するメーカー
The finding means millions of vehicles could be driving around much of the time with their pollution controls partly turned off. But it seems many cars are deliberately designed that way and it is all perfectly legal. この調査結果が意味するのは、何百万台もの車が公害防止装置を部分的に止めた状態で、ほぼ日常的に走っている可能性があるということだ。 しかし多くの車は意図的にそのような仕様になっていて、しかもそのこと自体は完全に合法だ。
(単語チェック)
finding:調査結果、研究結果
vehicles:自動車
pollution controls:汚染(公害)防止装置
turned off:(装置が)止められた、切られた
句動詞turn offの過去分詞形。
Never turn the printer off while printing.
印刷中にプリンターをオフにしてはいけません。
I turned off my alarm in my sleep.
私は寝ぼけたまま目覚ましを止めた。
deliberately:意図的に、故意に
legal:合法的な
規制に基いてせっかく装備されている排ガス改善のための装置を作動させない仕様が、なぜ合法なのか不思議ではありませんか?
これは、エンジンを保護するためであれば汚染防止の機能を弱めることがヨーロッパでは許されているからです。高温や低温はエンジンの部品に悪影響を与えるため、これを軽減するためというのが正当な理由になります。
専門家の見方では、多くの自動社メーカーがこの決まりを利用して、常温に近い温度でも公害防止機能が切れるように設定しています。エミッション・アナリティクス社はその狙いを次のように分析しています。
"I would say from the Euro 5 generation of cars, it's very widespread, from our data. Below that 18 degrees [Celsius], many have higher emissions... the suspicion is, to give the car better fuel economy," 「私の意見では、ユーロ5規制世代の車からこの傾向が広範に見られることが、データから読み取れると思います。摂氏18度未満になると、多くの車について排出物の増加が見られます。疑われるのは、燃費を向上させるためではないかということです。」
(単語チェック)
I would say:私の意見では、〜だろうと思います
これは発言を和らげるのに便利な表現です。
I would think 〜 の形でも使います。
generation:世代
widespread:幅広い
degrees:(温度について)〜度
Celsius:摂氏
「華氏」はFahrenheit。
suspicion:疑い
fuel economy:燃費
同社は、0℃で装置が切れるならともかく18度では設定が高すぎると指摘していますが、自動車メーカーは、あくまで車の故障を防ぐためだと主張しています。
現在ユーロ5規制に準拠した車はイギリスだけでも510万台走っていて、これらは今後まだ10年から15年間は現役で走ると見られています。そこで懸念されるのが排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)です。
今回のテストでユーロ5準拠の車のNOx排出量は、摂氏18度以上の場合は法定基準を3.6倍上回りました。気温が下がると排出量はさらに増え、基準を4.6倍上回ることもわかりました。昨年導入された「ユーロ6」規制に準拠した車では、やや改善されています。
☆ NOxか二酸化炭素か
実は、最近ドイツ、フランス、イギリスの政府が実施したテストでも同じような結果が得られています。ほとんどの車種について、気温が下がると排出ガスの量が多くなっていました。
これを受けてイギリス運輸省(Department for Transport)は「エンジンへの影響を防ぐために公害防止機能を制御することは認めるが、それは、今よりも限られた状況にだけ適用されるべきだ」という声明を出しました。
しかし実際には、イギリスで大きな雇用を担っている自動車業界に対して、政府がそれ以上強く言うことはできないのではないかという声もあり、改善がすぐになされるかどうかは不透明です。
また、これとは別の問題もあります。
The down side of cutting NOx gases is that the engine uses more fuel. The more fuel you use, the more carbon dioxide the car puts out and that's a greenhouse gas that harms the planet. NOxの排出を削減しようとすることには、エンジンがより多くの燃料を消費するというマイナス面がある。燃料を多く消費するほど自動車から大量の二酸化炭素が排出される。それは地球に有害な温室化ガスだ。
(単語チェック)
down side:マイナス面、望ましくない点
carbon dioxide:二酸化炭素
put out:生み出す、生産する
output(生産)はここから。
greenhouse gas:温室(効果)ガス、温室化ガス
温室効果の原因となる、二酸化炭素、フロン、メタン、一酸化炭素などの気体の総称。
このように、単にNOxを削減するために装置を改善すればいいという問題でもないようです。しかし大気汚染は人の命を平均6ヶ月は縮めるという説もあり、ディーゼル車への厳しい規制を求める声は今後も強まりそうです。