「厳しい(きびしい)」を英語で表そうとすると、まずsevereを思い浮かべませんか?「シビア」が半分日本語になっているので無理もないかもしれませんが、もちろん「厳しい」とsevereは一対一で対応しているわけではありません。
比較的思いつきやすい単語にstrictがあります。「厳しい」という日本語の中でも「厳格な」という意味の場合にはstrictの方が合っています。これ以外にも、「厳しい」という時の状況や、それを言う人が頭の中で考えている内容によって、実はいろいろな英単語が当てはまります。
今回は、日本語の「厳しい」の意味をおおまかに3つの意味のグループに分けて、それぞれに含まれる単語の使い方を挙げて行きます。では具体的に見ていくことにしましょう。
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1.severeを含むグループ
最初は、天候などの自然環境や現実の状況について「厳しい」という場合に使われる単語グループです。この中にsevereの主な意味が含まれています。
(1)severe
It is going to be severely hot this summer. 今年の夏は暑さが厳しそうだ。(今年は猛暑になりそうだ。)
このようにseverelyという副詞になっても、使われる状況は形容詞severeの場合と同じと考えてください。もう1つ例を挙げてみます。
He is believed to have suffered a severe asthma attack earlier in the day. 彼はその日の朝方に厳しいぜんそくの発作に苦しんだと見られている。
(2)intense
This summer's heat is intense. 今年の夏の暑さは厳しい。
(3)harsh
They faced a harsh reality. 彼らは厳しい現実にぶち当たった。
harshは「とげとげしい」のような語感で「厳しい」「深刻な」という場合に適しているので、言葉遣いについても使われます。
The wording in your letter of complaint is too harsh. あなたの手紙の言葉遣いは厳し過ぎる(きつすぎる)。
2. strictを含むグループ
「厳格な」という意味は本来「厳しい」という日本語の中心的な使い方で、対象によって「容赦のない」とか「近づきがたい」という場合もあてはまります。これに一番当てはまるのがstrictです。
(1)strict
He is a traditional Japanese husband, stricter than his father. 彼は夫としては日本的であり、自分の父親よりも厳しい。
Nowadays, strict regulations are enforced, banning any type of fishing in the immediate area. 今日では厳しい規制が実施されていて、近接地域ではどのような方法の漁業も禁じられている。
(2)stern
His comment on the matter met stern criticism. その件に関する彼のコメントは厳しい批判にさらされた。
sternもstrictと同様に、規律など「本来あるべき」という立場からの主張などの場合に使われます。
She spoke as quietly as her brother, but her voice was more stern. 彼女は兄と同じような静かな口調で話したが、声は彼女の方が厳しかった。
(3)uncompromising
He was very uncompromising with his employees. 彼は従業員に対してとても厳しかった。
uncompromisingは動詞compromise(妥協する)からできた形容詞なので、「妥協しない」「妥協を許さない」という意味ですね。従業員が仕事で手を抜くことを許さない社長だったということです。
このあたりは、「厳しい」という言葉が使われる状況から意味を深読みしないと出てこない訳語です。
(4)demanding
G7 countries are demanding with China on human rights and other issues. G7諸国は人権問題などで中国に厳しい態度を取る。
demandingは動詞demand(要求する)をもとにする形容詞(現在分詞)なので、『高い水準を求める」という意味での厳しさを表す時に使います。
I'm very demanding on myself, and I'm very demanding of the people around me. 私は自分自身にとても厳しいです。その代わり周りの人にもどんどん注文をつけます。
(「厳しい」は最初のdemanding。後半のdemandingは文字どおり「要求する」の意味で使っています。)
3. difficultを含むグループ
実際の会話では「厳しい」を「難しい」「困難な」という意味で使うことがとても多くありませんか?特に、新聞記事に出てくる経済問題などで使われる「厳しい」はこの意味で頻繁に使われています。
(1)difficult
The fiscal problems of Japan are far more difficult than those of the U.S. 日本の財政状況はアメリカよりはるかに厳しい。
この文の場合などは、severeと言って通じないこともありませんが、本来解決すべき問題なのにその道のりはとても困難である、という意識の「厳しい」はsevereでは出てこないと思います。
(2)tough
PM Abe claimed that this would mean a tough future for the world economy. 安倍首相はこれでは世界経済が厳しいことになると訴えた。
5月の伊勢志摩サミットで安倍首相が「リーマン・ショック前」を強引に引き合いに出して、増税延期の伏線にしようとしました。それはともかく、この場合の「厳しい」も「困難な」という意味ですね。このグループではtoughかdifficultでたいてい上手く言うことができます。
日本語で「タフな」というと困難や苦しさに打ち勝つ強さのことに重点があり、英語でもHe is as tough as old boots.(彼はとても頑健だ。)という使い方もしますが、英語のtoughは困難な状態そのものも表します。
(3)hard
The international situations are very hard. 国際情勢はとても厳しい。
hardに「困難な」という意味があるのはご存じですね。そこでこういう「厳しい」にも使えます。ただhard自体の意味がとても広いので、言おうとすることがかえってあいまいになってしまう可能性もあります。
(4)bleak
The employment situation for young people was very bleak. 若者の雇用環境はとても厳しかった。
bleakは少し見慣れないかもしれませんが、「見通しが暗い」「望みがない」という意味の「厳しい」について言う時に適した訳語です。
ここまで3つの意味のグループに分けて「厳しい」を表す単語を見てきました。「厳しい」にsevereを使う状況は、実はとても限られているということがわかっていただけたでしょうか?
英語で「厳しい」をsevereと言いそうになった時は、他に何か言い方はないかとまず考えるようにすると単語力アップにつながりますよ!