台湾に女性新総統誕生~中国社会ならではの反応

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1月の台湾総統選挙で当選し、台湾史上初の女性総統となった民進党の蔡英文氏が、5月20日に国民党の馬英九氏の後を受けて第14代総統に就任しました。これについて中国では、「女性」であることに違和感を持つ意見が多いようです。英語を学びながら、中国社会の価値観をのぞいてみましょう。
(英文は、”Criticism of Taiwan’s ‘single’ President Tsai Ing-wen sparks anger in China” CNN.com 2016/5/25)

蔡総統は、焦点となっている対中国政策について就任演説で、中・台は不可分の領土とする「一つの中国」原則に関するいわゆる「92年合意」の受け入れを表明しませんでした。台湾の「穏健な独立」を掲げる蔡総統に対し、中国政府は当初から厳しい態度で臨んでいます。

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☆「独身女性は総統にふさわしくない」

一方、そうした政治的な立場とは別に、中国の社会では独身女性であることに対する戸惑いがあります。そして特に国営のテレビ局や通信社が、そうした違和感をあおっている面さえ見られます。

According to an op-ed in an official Chinese state-published newspaper, being an unmarried, childless woman makes Taiwan’s newly inaugurated president unfit for her job.
中国国営紙のある論説では、祭総統は未婚で子供のない女性であるため、その地位にふさわしくないという見解が掲載された。

(単語チェック)
op-ed:論説
 語源はopposite editorial。新聞社の見解を代表社説とは別に、社外を含む多様な委員により署名入りで持論が展開される論説がopposite editorialでした。opposite(反対の)は、1970年にthe New York Timesが最初に掲載した時に、紙面で社説の反対側に掲載されたことから。
inaugurated:就任した
 動詞inaugurate(就任させる・任命する)の過去分詞。名詞はinauguration(就任)。来年1月にアメリカ新大統領が誕生しますが、その際のinauguration speech(就任演説)はいつも注目されます。
unfit:〜に適していない

蔡英文(Tsai Ing-wen)新総統は、台湾のトップ大学の法学部を卒業後、アメリカのコーネル大学ロースクールとイギリスのロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで法学博士を取得しました。帰国後大学教授を経て民進党の政治家となり、副首相に当たる行政院副院長も務めました。

しかし中国の新華社の論説は、「独身」であることを彼女の政治姿勢に結びつけた論調で、次のように紹介し、長期的視野がなく短期的な政策に終始するだろうと予想しています。

As a single female politician, she has no emotional encumbrances of love, no family restraint, no children to worry about. Her political style and tactics are often emotional, personalized, and extreme.
独身の女性政治家である彼女は、恋愛感情の悩みも、家庭の制約も、子供の心配もない。彼女の政治スタイルと戦略は、感情的、自己中心的、かつ極端なものであることが多い。

(単語チェック)
encumbrance:邪魔物、妨害
restraint:制約、制限
 動詞はrestrain(拘束する、抑える)。

☆ 根強い差別意識

これに対し中国の国内でも一部の学者からは批判的な意見があります。

What does being single have to do with her political views … isn’t it naked discrimination against singleton?
独身であることが、政治的な見解とどのような関係があるのだろうか?それは独身者に対するあからさまな差別ではないのか?

(単語チェック)
naked:裸の、むき出しの
singleton:独身者

◆have to do with:〜と関係がある
A lot of the trouble has to do with the new communication system.
トラブルの多くは新しい通信システムに関係がある。

また、have something (nothing, much, little)to do with〜は、
 something →「(何か)関係がある」
 nothing →「関係がない」
 much →「非常に関係がある」
 little →「ほとんど関係がない」
という意味になります。

I have nothing to do with this.
これは私には関わりありません。

こういう批判はふつうに考えればもっともな意見ですが、中国の社会ではこうした見方はまだ少数派のようです。1960年代から70年代にかけての10年あまりに及ぶ「文化大革命」は中国の価値観に大きな変化をもたらしましたが、女性に対する差別はその後現在に至るまで強まっているというのが一般的な見方です。その例を挙げてみましょう。

(1)中国のトップ300企業での女性役員の割合は10%に満たない。
また国営メディアが女性を取り上げる時には、まず容姿と未婚・既婚の別に注目します。

(2)国営紙「人民日報」のウェブ版特集
昨年このウェブサイトでは、中国の全国人民代表大会(全人代)を取材した女性ジャーナリストの写真入りページを作り、「有能な美女たち」(Beauty with brains)とタイトルを付けました。

(3)今年の旧正月のテレビ特番
7億人近くの人が視聴したと言われるこの特番では、太めの女性と未婚女性をネタにする(mock:あざ笑う、ばかにする)コーナーがあったそうです。もちろん、それには反発の声も上がりました。

Incensed feminists called for an end to the annual televised extravaganza in an online petition.
激怒したフェミニストから、毎年恒例のこのテレビショーをやめろという投書がオンラインで寄せられた。

(単語チェック)
incense:(人)をひどく怒らせる[立腹させる]、激怒させる
call for:〜を要求する
extravaganza:派手なショー、華やかな祭典(←「狂騒曲」から)
petition:請願(書)、嘆願(書)、陳情(書)

さらに、著名ジャーナリストからも次のような発言がありました。

A man can have thousands of ambitions but a woman only one — to give birth.
男性は大きな望みをいくつでも持つものだが、女の場合はたった1つ、子供を生むということしかない。

中国の既存の(特に国の関与が強い)メディア)ではこうした傾向が今も支配的であることがわかります。その背景には、女性がかつての「女性らしさ」を失いつつある(women aren’t as “feminine” as they once were)ということを問題視する男性側の意識があるようです、

しかしインターネットの世界では、このように「女性の役割」を決めつける考え方に対する不満の声が目立ちます。そして台湾の新総統についても、彼女のような強い女性リーダーは女性があるべき姿の模範(role model)だと考えるコメントが多く見られます。

こうした声が今後も高まってくるならば、中国政府にとって対台湾での政策面だけでなく、国内統治という点でも祭総統はやっかいな存在になります。中台関係は今後も山あり谷ありが続くのでしょうか。

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