2014年に出版された数多くの書籍のなかでも、最も全世界にインパクトを与えたもののなかに「ZERO TO ONE(ゼロ・トゥ・ワン)」があります。これはIT産業のメッカ・シリコンバレーで最も有名な投資家の一人であるピーターティール氏による著書です。
彼の実績は、とても一つの人生では語れないほどのもの。オンライン決済サービスの先駆けとなったPayPalをイーロンマスクを含む、後にYoutubeやYelpを立ち上げるようなチームで創業をはじめ、IPOを経験。その後、150億ドルもの額でeBayに売却します。それからは、投資家としての手腕を発揮し、Facebookの創業期に50万ドルの出資を行ない、同社がIPOになった直後に売却をします。今は、なんと世界初の人工島を建設し、国家そのものを個人で作ろうと試みています。
そんな超人的な能力を現代社会をもって、あらゆる観点から世界を変えたピーターティールのエッセンスが詰まった本がZERO TO ONEでした。ここでは、ビジネスに対する捉え方が記述されているのですが、印象的なのは俗に言われてるような起業の原論とは大きく異なるところです。主に、起業は競争とイコールとなり、いかにして他の企業に勝てるかどうかを考え、建設的な空論の上で、行動が決定されていきます。
しかし、数多くの成功を残したピーターティールはそれとは異なった視点で起業を語ります。それはまさに、ゼロからイチを生み出すということです。どうすれば、この世にまだ存在してはいないものを生み出せるかどうかです。新しいものさえ作ってしまえば、そこで戦う相手などいないということです。まさに、ダイナミズムそのものな言葉。
ここでは、ZERO TO ONEで取り上げられているような内容を幾つか紹介してみたいと思います。
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■反抗するということは、自分で考えるということ
The most contrarian thing of all is not to oppose the crowd but to think for yourself. 反抗的な発言をする人たちの多くは群衆に反対するのではなく、自分で物事を考えているのです。
マイノリティな意見が良いと言いますが、ただ反対しているだけでは、ただの捻くれ者です。いかにして、自分で考え、自分で行動することができるのかを磨かなければなりません。反対するというのは、否定をすることではなく、人とは違うということを証明しているというわけなのです。
■新しいモノを生み出すことができれば、競争相手はいない
All failed companies are the same: they failed to escape competition. 今まで失敗してきた会社は同じ:つまり、彼らは競争を避けられなかったのだ。
ピーターティールといえば、競合を嫌うことで有名です。競争して、己の体力を擦り減らすような戦いはやる意義はないということです。全く新しいものを生み出すことができれば、そこに競争する相手などいないのです。誰かが既にやっていることなど、自分がやる意味などないのです。
■最も良い路は、新しく誰も挑戦していない路だ
Today’s “best practices” lead to dead ends; the best paths are new and untried.今日の「ベストプラクティス」は最後に死ぬという現実に帰着する;最も良い路は、新しくて、誰も挑戦していないところだ。
ベストプラクティスとは、目的や求めている結果を得るために行う最善の手法や、プロセスを指します。または、仕事を行なっていく上で選ばれるべき最も効率の良い技法や選択、あるいは考え方です。つまり、結局終わりがくるという現実を目の前に、何をやるべきか。それは、まだ見ぬ土地を開拓していくということ。
■新たなテクノロジーなくして、グローバル化は持続しえない
In a world of scarce resources, globalization without new technology is unsustainable. 希少な資源が残されている世界では、新しいテクノロジーなしでのグローバル化は持続しえないのです。
食糧や、電力などエネルギー、あらゆるものは決して有限なものであって、ありふれているわけではありません。このように限られた状況下でなにかを実現する為には、それを工夫して使うためのテクノロジーが必要となってきます。持続可能な世の中を実現していく為には、なにが必要なのかを常に考えていかなければなりません。
■何十年かけてでもやり切るような新しい視点を持つこと
Most of a tech company’s value will come at least 10 to 15 years in the future. テック会社の多くの価値は、10年から15年の将来にやってくるものでしょう。
目の前のことを解決するのではなく、何十年もかけてでもやり切るような新しい視点を持つことが必要となります。すぐに手放すことができるようなものに行動する価値はなく、人生を賭してやろうとすることにこそ意味が成せるということになります。
■道は誰かが切り拓いていかなければならない
The road doesn’t have to be infinite after all. Take the hidden paths. 道路は延々と結局続くというわけではありません。道は途中で隠れてしまうのです。
その道は誰かが切り開いていかなければならないのです。それが誰かなのかは分かりませんが、誰かとなります。それが自分であるならば、その人生は楽しいものなのかもしれません。
■早く動くことは戦略であって、目的ではない
moving first is a tactic, not a goal. 早く動くことは戦略であって、ゴールではない。
スピード勝負とは、ビジネスにおいて大切なことではありますが、あまりに重視されすぎていて、早く動くことこそが勝利となっているような風潮があります。しかし、実際に早く動くことということは、それを行うための手段にすぎないということです。
■モノを生み出すだけでなく、それを売る方法も生み出さなければならない
You’ve invented something new but you haven’t invented an effective way to sell it, you have a bad business—no matter how good the product. あなたは新しい何かを発明しただけではなく、それを売る効果的な方法もまた発明しなくてはいけない。どんなに良い商品であっても、それがやり方次第で最悪のビジネスになってしまうのだ。
ビジネスは基本的に、モノを作るフェーズと、売るフェーズに分かれ、両方が成立していなければ、大事をなし得ません。特にテクノロジーの業界では、モノを作ることに焦点があたり、そればかりになってしまう傾向にあります。そうではなく、すべてを完璧に新しく発明することこそまでが、ビジネスとなるのです。
ピーターティールはまだまだ衰えを見せず、次から次へと、新しいものに可能性を見出し、作品として世に提出しています。ひとつの参考意見として、彼の言葉を追ってみることは人生の指針となるのかもしれません。