冬のおすすめ作品として定番の「シザーハンズ」は1990年の作品ですが、普遍的なテーマとエキセントリックな衣装や美術で時代を感じさせません。
ハサミの手を持つ純真無垢な人造人間と人間の家族との交流と淡い恋を描いています。
脚本・監督はティム・バートン。
傷つきやすい純粋な人造人間エドワードをジョニー・デップが好演しています。
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■ひとりぼっち
ストーリーは、ある冬の夜、おばあさんが孫娘にお話しを聞かせるところから始まります。
「雪はどうして降るの?」と尋ねられて、おばあさんは山の上の発明家のお屋敷に住む人のことを語ります。
発明家は大きなお屋敷でいろんなものを造って暮らしていましたが、そのなかに機械の人間も含まれていました。
Old Lady: Well, a long time ago, an inventor lived in that mansion. He made many things, I suppose. He also created a man. He gave him inside, a heart, a brain, everything. Well, almost everything. You see, the inventor was very old. ①He died before he'd got to finish the man he invented. So the man was left ②by himself incomplete and ③all alone. 「昔々、あのお屋敷に発明家が住んでいたの。たくさんのものを造ったようよ。そして、人も造ったの。発明家は、その人に中身を造ってあげたの、心臓や脳やすべて。いえ、ほぼすべてを。あのね、発明家はとてもおじいさんだったの。自分が発明した人を仕上げる前に亡くなってしまったのよ。だから、その人は未完成でひとりぼっちで残されてしまったの。」
Little Girl: Did he have a name ? 「その人には名前があるの?」
Old Lady: Of course, he had a name. His name was Edward. 「もちろんあるわ。名前はエドワードっていうのよ。」
①は、時制の例文にちょうどいい文です。
「人造人間をつくる」→「仕上げる」→「発明家が亡くなる」だとよかったのですが、「仕上げる」と「亡くなる」が逆になってしまったために、エドワードは不便な姿で残されてしまったのです。
過去の出来事の順番をより正確に表すため、before 「~の前に」のあとの文は過去形より一つ前の出来事を表す過去完了形he’d(= he had) got になっています。
なお、he invented の部分は関係代名詞が省略されている関係節で、直前のthe man にかかっていきます。関係節の中では、過去の出来事は普通(過去完了形のところでも)過去形が使われます。
「ひとりぼっち」を表す②by himself と③all alone が使われていますが、by ~self とalone は同じ意味です。all alone のall は「すべて」の意味ではなく、強調の言葉で「全くの・すっかり」という意味です。
また、③の場合はalone は一人ぼっちのことを表していますが、alone 自体は「ほかの人がいない」という意味なので複数の人たちだけの場合にも使われます。
Here, we can get all alone, just you and me. 「ここなら僕たちだけ、二人きりになれるよ」
Are we alone ? (待ち合わせなどで、集まったのが何人でも)「私たちだけ(ほかの人は来ないの)?」
ちなみに、ひとりを表す言葉はほかにもあります。自分だけの力で何かを実行するときに使うon ~self「独力で」です。on your own も同じです。
You can get there on yourself.「一人でもそこにたどり着けるよ」
= You can get there on your own.
■特別な人
山頂のお屋敷で彼を見つけて引き取ることにしたPeg は、もの珍しそうに何でも試してみたがるエドワードにとても寛容で、You go ahead to look. You have every reason to be excited.「どうぞ、見ていいわよ。ワクワクするのも当然だもの」と声をかけます。
Go ahead は相手がしたがっていることを勧めるときに使います。
また、エドワードの手がハサミになっているのを見て警戒していた人たちは、彼の芸術的なハサミさばきを見て、庭の手入れやヘアカットを頼むようになります。
You know, I have a doctor friend who I think could help you. 「きっと力になってくれるいいお医者さんを知ってるよ」
と、何人かが彼に声をかけています。
Peg の友人は、エドワードのことを次のように表現しています。 You are not handicapped. What do they call you ? Exceptional. 「あなたは障害者なんかじゃないわ。みんな、(あなたのような人のことを)なんていうのかしら?そう、特別なのよ」
アメリカでは、handicapped という言い方を嫌って、challenged「克服しようとする人」という言葉を使う場合があります。
障害がある人たちは劣っているのではなく、努力している人たちだという考え方です。
両手が普通ではないことについてこの映画で使われているexceptional は、「世界で一つだけ」的な独自性を表していて、素敵な表現だと思います。
■やろうと思えばできた
警戒心→親睦と変化した隣人たちですが、エドワードが巻き込まれた事件によって、全く見方を変えてしまいます。
弁解しない彼の純真さが、かえってどんどん彼自身を悪者にしてしまい、大事件へと発展してしまうのです。
すべてが終わって、時は流れ、映画は最初の場面に戻ってきます。
一通り話しが終わった後の、少女とおばあさんの会話です。
Little Girl:④ You could have gone up there. ⑤You still could go. 「お山に登って行けばよかったのに。今でもまだ行けるでしょ?」
Old Lady: No, sweetheart. I'm an old woman now. I would rather ⑥have him remember me ⑦the way I was. 「いいえ。もうおばあさんになったわ。彼には、昔のままの私を覚えていてほしいのよ」
④could have gone は、「行こうと思えば行くことができたはずだ」という意味です。仮定の内容が含まれているのですが、省略されています。should 「~すべき」ではなくcould になっているのは、話しているのが子どもだからでしょう。shouldは大人に向かって言う言葉ではないからです。
should have goneでは上から目線の言い方になりますから、会話で使う場合も、相手に配慮した言い方をしたい場合はcould have + 過去分詞形「~できたはずですよ」を使い、指図してよい立場であればshould have + 過去分詞形「~すべきだったのに」を使うとよいでしょう。
You could have done more research beforehand.「前もってもっと調べておいてもよかったはずですよ」
You should have done your homework.「宿題(=事前にやっておくべきこと)をしておくべきだったのに」
⑤のcould もcan「できる」 の過去形ではありません。ここでも仮定法が使われています。ここはIf 節がないので、わかりにくいかもしれませんね。省略されているのはIf you want to (go) で、仮定法未来です。これから起こるかもしれないことについて、couldで可能性を表しています。
⑥have + 人 + 動詞の原形 で「人に~してもらう」という意味です。これも、理屈ではなく形で覚えたほうがいい表現でしょう。
I had my sister cut my hair. 「姉に髪を切ってもらった」のように、誰にやってもらったかを言いたいときは、have + 人 + 動詞の原形のパターンを使います。
また、I had my hair cut.「髪を切ってもらった」のように、だれにやってもらったかを言わなくてもよいときはhave + 目的語 + 動詞の過去分詞形 のパターンになります。(cut-cut-cutと形が変わらないので、わかりにくいかもしれませんが…)
こういうパターンは、一つ例文を覚えてしまって、言葉を入れ替えて応用するようにすると間違えないようになります。
⑦最後に「そのままの~」を表すthe way ~です。
ここでは、過去のある時点(映画の本編にあたる時期)の自分のことなのでthe way I was過去形で「あの時の私」と言っています。現在から過去を振り返って言うときにはthe way I used to be「かつての私」という言い方もあります。
the way I am現在形なら「ありのままの私」になります。
Please see me the way I am.「ありのままの私を見て」
■まとめ
化粧品会社のlocal representative「営業の地区担当者」が風変わりな姿をした人造人間を引き取るストーリーでは、見た目を重視するコミュニティが描き出されていますが、その設定ゆえにエドワードの純粋な愛情が引き立っています。
胸キュンの純愛ストーリーにひたりたいときにおすすめの作品です。
とはいえ、ここでご紹介した表現は、このような特殊な設定でなくても、ごく普通の会話で使えるものですから、ぜひ応用してみてください。