今年、世界中の注目を集めているのが米国の大統領選挙です。民主党ではクリントン元国務長官とサンダース上院議員が予想外の接戦になっていますが、共和党では大富豪の実業家トランプ氏がリードしています。
米大統領選挙は、11月8日の本番まで一年近く続く長丁場です。これからも毎日のようにニュース記事に登場しますので、今回はUSA Todayの記事から、選挙に関連した表現などを見てみましょう。
(英文は”Trump takes Nevada Republican caucuses” USA Today 2016年2月23日より)
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■共和党はトランプ氏優勢、2位争いは熾烈
まず候補者選びのシステムを簡単に見ておきましょう。
両党が候補者を選ぶ方法には、予備選挙(primary)と、党員集会(caucus)の2つがあります。
両方とも、夏に開かれる党の全国大会で候補者を決めることのできる「代議員」を獲得するための戦いで、州ごとにどちらかを行います。
予備選挙はその名の通り選挙をするだけですが、党員集会は各候補者陣営の代表者による演説もあり、その後に投票が行われるというところが違います。
◆sweeep(圧勝する)
さて、今回の記事は2月23日のネバダ州党員集会について伝えています。トランプ氏は今回の勝利で3連勝となり、前半のヤマ場と言われる3月1日の「スーパー・チューズデー」(全米の10を超す州で党代議員の約4分の1が決定する)に向けてはずみをつけました。
Donald Trump swept to victory Tuesday in Nevada Republican caucuses
(ドナルド・トランプ氏が火曜日のネバダ州党員集会で圧勝)
sweptは「(ほうきで)掃く」という意味もある動詞sweepの過去形で、一気にさらってしまうということから、一方的な勝利を表します。米大リーグのワールドシリーズで4連勝負けなしで優勝することもsweepと言いますので、野球好きの方はピンと来るかもしれませんね。
◆edge(僅差で勝つ)
共和党の候補者選びはトランプ氏と、テッド・クルーズ、マルコ・ルビオ両上院議員にほぼ絞られていますが、トランプ氏を追う2位争いは熾烈です。
Rubio, who narrowly edged Cruz for second place in South Carolina
(サウスカロライナ州でクルーズ氏を僅差でかわして2位となったルビオ氏は…)
若さをアピールするルビオ氏は、ネバダ州でもクルーズ氏に約2%という差で2位を守りました。edgeは「僅差で勝つ」「接戦を制する」という意味で、選挙の記事の決まり文句です。その意味ではnarrowly(かろうじて、ぎりぎりで)がなくても同じことですが、それほど接戦だったということでしょう。
◆turnout(投票者数)
ところで、選挙戦の盛り上がりを反映して、各州では関心がかつてないほど高まっています。
It appeared to be another record Republican turnout in Nevada, just as in the previous GOP contests in Iowa, New Hampshire, and South Carolina.
(共和党員の投票者数はこれに先立つアイオワ、ニューハンプシャー、サウスカロライナの各州の時と同様、ネバダ州でも最高を更新すると見られていた。)
ここに出てくるturnoutは「投票者数」。投票率のことも言います。また一般に集会やパーティーなどの参加者数、出席者数という意味でも広く使われるほか、「お客さんの出足は?」(How’s the turnout?) といった時にも使います。turnoutはこの記事の後半でも、動詞の turn outの形で出てきます。
Supporters who turned out to see Trump in Las Vegas on Monday said,
(月曜日にトランプ氏に会うためにラスベガスでの集会に出席した支持者は言った)
なお、GOPはGrand Old Partyの略で共和党の愛称。「共和党員」は同じ文にあるRepublicanです。
■大統領選の争点
ところで、一方の民主党ではクリントン候補が圧倒的に優勢と言われていましたが、意外なことに苦戦を強いられています。
その背景には、現在の政治に対する反発があると言われています。
特に若者や低所得者層の間で、それが目立っています。
こう言うと「大富豪のトランプ氏はどうして共和党で人気があるの?」と思うかもしれませんが、彼はクリスチャンなのにローマ法皇を批判するようなバリバリの「異端児」。
いわゆる「ワシントン政治」とは無縁の上、低所得者層から雇用を奪っている移民を制限するという主張が受け入れられています。
そしてこの問題は、他候補も無視できない大きな争点になっています。
◆raise the stakes(一歩踏み込む)
Cruz, who has attacked Rubio as being weak on immigration, also raised the stakes on that issue in Nevada.
(クルーズ氏は、ルビオ氏が移民問題について弱腰であると攻撃してきたが、ネバダ州の論戦ではさらに一歩踏み込んだ。)
「(ある問題について)さらに深く関わる」という意味ですが、stakeはもともとギャンブルの「賭け金」。これを上げる(増やす)ということから、あえてリスクをとってさらに踏み込むという姿勢を表しています。
◆deport(国外退去させる)
クルーズ候補が何をしたかと言うと、
vowing to deport an estimated 12 million people who are in the country illegally.
(推定1200万人と言われる非合法在住者を国外退去させると約束)
これはアメリカだけでなく現代世界のキーワードの1つかもしれません。portは「港」、deは「〜から離れる」の意味があります。たとえば、動詞departは、part(部分)つまりもとあった場所。ここから離れるので「出発する」という意味になります。話をdeportに戻すと、「港の外に追い出す」ので強制退去させるということですね。ヨーロッパでも難民問題が深刻になり、そちらの関連のニュースでもこの単語はしばしば見かけるようになっています。
◆make ends meet(やっとのことで生活する)
アメリカは現在景気がいいと言われていますが、実は貧富の差が極端な「格差社会」です。トランプ氏のようなごく少数の大富豪が富の大部分を握り、一方では消費どころか病院にも満足に行けない低所得者層がたくさんいます。そんな生活の厳しさは、いわゆる中流階級にも及んでいます。
she is having trouble making ends meet, and the struggling middle class needs things to change.
(彼女は生活するのがやっとで、困窮する中流階級は変化を求めている。)
こういう生活の実態が混戦の1つの原因になっているようですが、ここに出てくるmake ends meetは、やっとのことで生活するという意味で、会話でよく使われる言い方です。何となく、日本語の「帳尻を合わせる」に似た語感があるので覚えやすいと思います。
いかがでしょうか?ニュース英語は一見難しそうですが、本来多くの人にわかってもらえないと意味がないので、シンプルな表現や基本単語が多く使われています。この記事でも、キモになる部分はごく普通の単語が使われていると思っていただけたのではないでしょうか。これからインターネットのニュース記事も怖がらずに、どんどん読んでみてくださいね!