こんにちは。ころすけです。前回の記事に引き続き、今回も小学校英語について書かせていただきます。さあ今回は公立小学校の英語の授業で頻繁に取り入れられているアクティビティをご紹介したいと思います。いったい現場ではどんな盛り上がりを見せているのでしょうか?
フルーツバスケット
これはお決まりのゲームですね。一種の「椅子とりゲーム」です。同じ系列の英単語をいくつかまとめて覚えて、それらを使いながらゲームをするので単語の定着は抜群です。
たとえば果物の名前を覚えるときに、クラスのうち何人かは「apple」チーム、また別の何人かは「banana」チームだったり「melon」チームだったりします。鬼である1人を除いた全員が椅子でぐるっと円を作り、円の中心にいる鬼が「apple」と叫べばさっきまで座っていた者のうち「apple」チームだけは席替えをしなくてはいけません。鬼は「apple」チームに混じって自分の椅子を見つけようとします。1つだけ椅子が足りない計算になるので、見つけられずに取り残されたらその人が次の鬼です(運が悪ければ2回連続で鬼になることも…!)。「banana」と叫べば「banana」チームが動かねばなりませんし、「all」と叫べば全員が動かねばなりません。
果物名だと実際には小学生には易しすぎるので、教科名(Math, P.E.…)や職業名(dentist, farmer…)、国名(China, Philippine…)、動物名(horse, kangaroo…)などを用いておこなわれることが多いですね。頻繁に新出単語を耳にするということで、このゲームを通して楽しみながら単語を身につけることができます。単語のフラッシュカードをめくるより圧倒的に楽しい時間を演出することができます。
また変形ルールとして、鬼が自由に「boys」「girls」などと対象を指定することもできますし、たとえばALTが鬼であれば「girls with skirt」ですとか「boys with glasses」などのように対象をぐっと絞り込んで難度を上げることで、クラスは一気に盛り上がります。これはリスニングの訓練としても非常によいでしょう。6年生ぐらいになれば、「boys who had breakfast today」などのように長い指示も有効になりますので、意外と高学年でも使えるゲームです。
Buzzゲーム
これは注意力をたいへん要するゲームです。全員がシンと静まり返って真剣にゲームに臨むので、これは先生たちにとって大きくムードを変える必殺技でもあります。クラスがなんとなくダラけてくる中盤でおこなうといいですね。
具体的には、このように進行します。ある規則にしたがって並ぶ単語のうち、事前に「言ってはいけない」もの(=Buzz word)を1語、事前に選んで全員で共有します。たとえばMonday, Tuesday…と7つの曜日を順番に1人ずつ言っていくとき、もしBuzz wordがFridayであれば、そのFridayは「言ってはいけない」ということです。Thursdayのあとに順番がまわってきた人は、Buzz wordであるFridayを口にしない代わりに手拍子を大きく1つ打ちます。その人は口を開いてはいけないんです。続く次の人がSaturdayと言い、さらに次の人がSundayと言い、これで一巡します。また次の人がMondayから始めていきます。同じようにFridayのところにまわってきた人は、Fridayと言う代わりに手拍子を打つのです。とても単純ですが、スピードに乗って進めると、あっと言う間に引っかかってしまうんです。
順番に並ぶ単語群でおこなうことがポイントになります。たとえば月名(January, February…)を用いるのもいい例ですね。実は月名については、「日本語に直したときそれば何月なのかは知っていても、すぐに順番に英語で並べられない」という子がとても多いんです。これは単純なようで実に難しいゲームです。
数字の「倍数」を用いて
これはBuzzゲームの変形であるとも言えます。たとえば「4の倍数」のときだけは手拍子を打つ、というルールをみなで共有したら、「4」「8」「12」「16」…といった「4の倍数」がまわってきた人はその数字を言ってはいけません。代わりに手拍子を1つ打ちます。1、2、3、パン!(手拍子)、5,6,7、パン!(手拍子)、9、10、11、パン!(手拍子)…といった具合にです。
これも、どんどん脱落者が出るので盛り上がるゲームです。なぜなら、英語で数を数えるというのは小学生にとっては難しいものなんです。1から10までであれば、早いスピードで数えても全員がついてきます。でも、11以上からはスピードを落として進行しないと、脱落者が多すぎでムードが悪くなってしまう点が要注意です。倍数のところで手を叩かずについ「Twelve!」と言葉を発してしまった場合のミスはもちろん、倍数でもなんでもないところで「英語で15を何というか忘れてしまった」という沈黙ミスも生じます。小学4年生ぐらいではまだまだ11以上の数字はすらすら出てこないようです。だいたい20を超えるあたりからリズムに置いて行かれる子が続出し、30ともなれば6年生でも半分しか残っている子がいません。
さらに、これを変形させたものがあります。今となっては懐かしのコメディアン「世界のナベアツ」さんの持ちネタで、「3の倍数のときだけ変な顔になります」を覚えている方は、どのくらいいらっしゃるでしょうか。「いち、に、サン!(変な顔)、し、ご、ロク!(変な顔)…」というネタを思い出していただけたでしょうか。実は、細々と英語の授業でも”おもしろアクティビティ”として取り入れられているんです…!
これを英語の授業に応用するときには、「3の倍数」がまわってきたら手拍子を入れる代わりに、「Three!」と言って変な顔をします。6であれば「Six!」、9であれば「Nine!」と、とにかく倍数のところで大きく叫び、変な表情を作ります。男子生徒はいつも喜んでやっていますね。ご想像どおり、教室内はおおいに盛り上がりを見せます。いずれにしても、倍数を使うゲームは頭をフル回転させねばならないので、わりと負担の大きなゲームになると思います。しかし、この単純明快なルールと脱落のスリルのおかげか、倍数を使ったゲームは生徒のなかでも人気があり、現場でも繰り返し取り入れられていることはぜひみなさまにご紹介したいと思いました。
キーワードゲーム → 中央の消しゴムをget!
2人ペアでおこなうゲームです。2人の机を正面どうしまたは左右でぴったりとくっつけ、ちょうど2つの机の中央に消しゴムを1つ置きます(ポイントは2人にとって等距離にあたるところに置くことです)。それぞれ両手は頭の後ろに組んで、待機しています。ALTがランダムに単語を発音していくなかで、事前にみなと共有しておいたキーワードを発音したら、消しゴムに手を伸ばして奪い取るのですが、奪い取れたほうが勝者です。
たとえば、”sh”で始まる英単語を「shell, shower, shovel, shave, shock…」とALTがどんどんランダムに発音していくわけですが、ここでもしキーワードである「shake」が発音されたなら、瞬時に手を伸ばして消しゴムを奪いにいくというわけです。これは音の聞き分け力を鍛えるのにとても適したトレーニングであり、しかもエンターテイメント性もあるので、好んでよく授業にも用いられます。
しかし、「奪い合い」という行為は、メンタルがある程度大人になっていないと生徒どうしのケンカにも発展しかねませんよね。もし英語の義務教育がこの先さらに早まって、仮に1年生からスタートするとなった場合には、このゲームは絶対におすすめできません。幼稚園を出たばかりの子たちですから、クラスに何組かは「僕のだ、私のだ」「押された、取られた」なんて訴えが出てしまうので授業の進行が立ち行かなくなるでしょう。
字数に限りがあるため本日はたった4つしかご紹介できませんでしたが、クラスが和気あいあいと学んでいる様子をご想像していただけましたでしょうか。授業を楽しむことそれじたいはもちろん大事ですが、生徒に身につけてほしいことに即して「もっとも適したアクティビティ」をそのつど提供するのは、教える側の大切な仕事です。
なにげない1回1回の英語の授業も、実はしっかり練られているということですね。お読みいただきありがとうございました。