こんにちは。旅行ネタが大好きなころすけです。本日は外国人観光客たちのあいだで人気沸騰の「カプセルホテル」について書いてみたいと思います。
スペルは大丈夫?「capsel」 ではありませんよ!
さて、日本語では「カプセルホテル」なんて言いますが、正しく英語のスペルに直せますか? そのままの音をアルファベットに当て込んでみたら「capsel hotel」になりますが、これは間違いです。正しくは「capsule hotel」です。発音も「キャプスル」と言ったほうが実際の英語に近いですね。
ところでみなさんがカプセルと聞けば、”薬”を想像しますよね。粉状の薬を飲みやすくするためにゼラチン製の円筒に閉じ込めているのがいわゆるカプセル錠剤です。それに形を模しているが「カプセルホテル」というわけです。言い得て妙!とはまさにこのことですね。
ほかに最近の言い方では「pod hotel」(ポッドホテル)なんてのもあります。もともと英語の「pod」には、(エンドウなどの)さや状のもの、まゆ、(宇宙船の)離脱部、といった意味があります。不思議なことに、「pod」と言うことで少しモダンな響きに聞こえませんか? 日本人が「カプセルホテル」と聞けば、終電を逃したサラリーマンたちのための安宿というイメージですが、「pod hotel」の持つ響きはもうオシャレでしかありません…! 清潔かつじゅうぶんな快適性を備えた、近未来型宿泊施設なのです!
クールジャパンの代名詞
さて、ホステルという形態の宿が首都圏/京阪神を中心に続々と新規オープンしていることは過去の記事で述べました。それと同時に、「カプセルホテル」もどんどん増えてきています。メインターゲットはずばり外国人旅行客です。日本ならではの体験として、「カプセルホテル」が旅行での must-do list に載っていることもめずらしくありません。
厳密に言うと「カプセルホテル」はあくまで簡易型の宿泊施設なので、規約上はこれは「ホテル」のカテゴリに入ってきません。便宜上「capsule hotel」という言い回しが根づいているものの、「lodge」や「accommodation」という英単語のほうが的確にそのランクを表しています。快適性への期待度をあおらないように、外国からのお客様には「hotel」ではなく、「a type of accommodation called “capsule hotel” 」と説明するのが無難でしょう。そして各個室のことは「room」ではなく「unit」で表現するのが適切です。あくまで、仕切られた空間として伝えるべきです。
人気の秘密は?
さあ、ではどうして「カプセルホテル」は外国人観光客のあいだで人気なのでしょうか?
理由はさまざまありますが、筆頭に挙げられる理由はずばり「futuristic」(未来的)だから、ですね。カプセルの見た目に惹かれるようです。比較的新しい施設のものだと、いかにも宇宙旅行を意識してデザインされているものが多いですね。暗闇の中に白くスタイリッシュに並ぶ個室たちが、最高のワクワク感を演出してくれます。ピンクや黄緑の蛍光色ライトで各個室の入り口をぐるっと囲んであるデザインは、大人もぐっとくるでしょう。ディズニーランドの「スペース・マウンテン」を髣髴とさせます。youtuberやinstagrammerならたまらないでしょう。
そして2つ目のポイントは圧倒的な宿泊料金の安さです。都内なら一泊4,000~6,000円が相場です。あえて快適性を追求した広めの施設では7,000~8,000円かかるようです(特大カプセルを想像していただくとよいかと思います)。また空港での乗り換え客のために、transit hotel としてこうした「カプセルホテル」型のものも少しずつ増えてきましたが、空港ビル内では残念ながら9,000円ほどかかってしまいます。仮眠所にこんな高額な値段がついていても、「カプセル」型というデザインがそれだけ人を惹きつけるので連日満室なのが現状です。
さらに「カプセルホテル」を利用するメリットとしては、個室内が完全なプライベート空間になっていることが挙げられます。ドアを閉めれば、狭いながらもそこは自分だけの独立した世界です。これに対して見知らぬ人と部屋をシェアするホステルでは、解放感があるようで実はありません。たとえば8畳間に2段ベッドが2つ、つまり4人もいれば、空気もよどみますし、互いの寝息(運が悪ければいびき)も聞こえるわけです。寝る時間、起きる時間だってそれぞれ違いますから、他人のペースを常に気にしながら過ごさねばなりません。これなら、狭くても完全独立型の「カプセルホテル」に泊まったほうがよいという方は非常に多いです。
外国人にはコレを忘れないで説明してほしい!
上記に3つ、「カプセルホテル」が人気である理由を述べましたが、実は筆者としては忘れてはならない”とっておきの理由”があると考えています。そう、「カプセルホテル」とは日本人の精神性をうまく表現したものだから外国人が興味を示すのだと思うんです。どういうことだと思いますか?
思い返してみてください。日本人は、「4畳一間」ですとか「起きて半畳、寝て半畳」なんてよく言うように、もともとは小さな空間で工夫しながら生活してきています。「カプセルホテル」とは、限られた空間でもコンパクトに、かつ快適に暮らす日本人の知恵が反映されている見事な有形文化だから、外国人には新鮮に映るのだと筆者は思っています。手に届くところに必要なものが揃っているのは、「狭い」というネガティブ要素でとらえるより、むしろ「便利である」とプラスに解釈できるんじゃないでしょうか。
1979年にはじめて大阪で開業した「カプセルホテル」ですが、当時はシンプルな発想で「清潔に、安く、寝る場所を提供する」のが目的だったと思います。ミニテレビが個室についているだけでちょっとした贅沢だったのでしょう。今はそれが進化して、LED照明/電源コンセント/USBポートまで付いて、さらには無料wifi接続サービスや1人1つあてがわれるロッカー、また共同施設には大浴場ができたりと、さらに快適性は増しています。フロントもホテルさながらの本格的なもので、観光案内の一環としてオプショナルツアーやレストランの予約代行までしてくれます。もはやこれは「終電を逃してしまい仕方なく泊まる」場所ではありません。訪日観光業のインフラとして今後のさらなる発展に大いに期待してよいでしょう。
ガチャガチャポン!は「カプセルトイ」と言う
そうは言っても、なかなか「カプセルホテル」には泊まる勇気の出ない方は一定数いるものです。筆者の担当するツアー客のなかにも、「ノリで泊まってみたいとは思うけれど、何泊もするのは正直自信がない」なんておっしゃる方も…。ただ、日本旅行の記念として「カプセルホテル」は一度訪れてみたいと言う強い欲求はあるそうです。
そんなときには、「カプセルトイ」売場に案内してあげます。いわゆる「ガチャガチャポン」ですね。お住まいの地域によっては「ガチャポン」や「カシャポン」、あるいは「ガチャガチャ」という呼称もあるでしょう。ご存じのとおり、硬貨を入れてダイヤルを回したら、プラスチックのカプセルに包まれたおもちゃがでてきますよね。キーホルダはもちろん、ぬいぐるみ、文房具など、実にさまざまなバリエーションがあります。
さて、日本人は気づかないかもしれませんが、日本は「キング・オブ・自動販売機文化」です。「カプセルトイ」はまさにその最たるもの。オタク文化で知られる秋葉原に百台以上も並ぶ「カプセルトイ」売場は、隠れた観光名所になっています。アニメを扱うものもあれば、女性アイドルグループを扱うものもあります。今では電子マネー対応の機種もずいぶんと増え、「カプセルトイ」は劣らぬ人気を見せています。
購入後カプセルを開けて中身を取り出したら、カプセルを回収する箱が近くに置かれているものですが、外国人観光客はカプセルを捨てずに記念として自国に持って帰ることも少なくありません。「カプセルに包まれている」ことも含めて日本らしさを感じるのだそう。実はアメリカが「カプセルトイ」発祥の地なんですが、日本のようにはブームを巻き起こさなかったようで、意外とその事実はアメリカ国民に知られていません。
今回の「カプセル」トーク、いかがでしたでしょうか。昔ながらの「カプセルホテル」を想像されていた方には新鮮だったと思います。写真映えばっちりの新しい「カプセルホテル」をぜひ覗いてみてくださいね!