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参考書業界ではニッチ!? 「英作文」教材における重要な制作の視点

こんにちは。元・英語教材編集者のころすけです。
これまで出版社で10年以上も英作文の参考書・問題集を作ってきましたが、書店において売上の上位を占めるのはいつも単語集/長文読解問題集ばかりですね。実際に英作文の教材は需要が小さいので、世の中に数多いる英語学習者たちの話題に上ることも極めてまれです。英作文というジャンルは、多忙な学習者にとっては最後の最後に余裕があれば取り組むものなのでしょう。

英作文教材を作ってきたという筆者のレアな経験がみなさまの話のネタになればと思い、以下に英作文教材にまつわるアレコレを共有いたします。どうぞお気楽にお読みください。

「英作文は英借文」

どこかで「英作文は英借文」というフレーズを聞いたことがありませんか? 学校の英語の先生が英作文指導時によく言う言葉の1つとして、とても有名なものです。
これは「よい英作文を書くためには、どこかからキチンとした表現をそっくりそのまま借りてきましょう」ということです。英作文のアイディアを盗作せよ、と言っているのではありませんよ。

英作文は、英語が苦手な人にとってはスピーキングと同じくらい強く苦手意識を持つものかもしれません。何もないところから、いきなりアウトプットしなくてはならないからです。しかし、段階的なトレーニングを踏んでいくことは100%可能であり、はじめは何かをまねて書いていくことから始めるのがふつうです。
よい手本(つまり英作文問題集ならば「模範解答」がそれです)を繰り返し何度も書き写していくことで、おのずと表現の「型」が身についていきます。問題集に取り組む前にも、たとえば学校の英語の教科書をノートに書き写す宿題なんて、思い返せば頻繁に出ていませんでしたか? これは生徒が教科書に載っている表現を「英借文」することによって、将来的なアウトプットにつなげてほしいと先生たちが願っているからです。書き写しながら単語を覚えるとか、スペルを体得するとか、もちろん小さなメリットはほかにもたくさんあります。けれど、書き写し効果が最大限に発揮されるのは、ずばり「型」の習得にあります。

「和文英訳」が英作文の基本中の基本

中学生・高校生レベルで課される英作文は、おもに文法知識と語彙を確かめるために課されます。「あなたの考えを肯定・否定の立場いずれかに立って200語以内の英語で書きなさい」といった超ハイレベルな問題は、大学生以降、あるいは最難関大学の入試問題でしかお目にかからないでしょう。こういったハイレベル問題は、もはや書店の参考書コーナーでは対応している教材がほとんどないでしょう。すでに英語の基礎ライティングを身につけている学習者には、ご想像どおり「個別添削」が有効です。書籍という形態では、一定レベル以上の学習者に対しては提供できることがたいへん限られてくるからです。

書店に並んでいる教材というのは、ほとんどは初級・中級レベルの学習者をターゲットとしています。個別添削が必要ないほど、まだまだ読者の語彙も文法も知識が浅いわけです。個別添削と違って、書店で販売している教材は読者に同一の解説をすることになりますが、これがちょうどレベル的にマッチしているわけです。
そのため参考書や問題集に掲載されている英作文のタスクは、示された和文1文だけを英訳させるものがもっともポピュラーなものです。これぞ英作文の王道です。もし100題の和文英訳が問題集に掲載されているならば、まんべんなく文法100項目を散らします。たとえば、not only A but also B を使うように仕向けている問題や、仮定法現在や仮定法過去の知識を確認する問題など、編集部で綿密に練られて掲載されています。網羅性を重視することはもちろん、少しずつ段階を追って難しい表現になるように、配列にも気を配ってあります。英作文は、最終的には自分の考えを書くことがゴールでありつつも、まずは日本語を的確に英語に訳出するトレーニングが正攻法です。英語の成績がよい生徒がなんとなく自力で書けることは珍しくないものの、こうして意識的なトレーニングを重ねていかない限りは、なかなかライティング力に発展が見込めません。

「構文」の運用が爆発的に得点を上げる

みなさんは「構文集」を購入したことがありますか? 英語教育に力を入れている高校の出身者だと、”神参考書”と長く語り継がれる「英語の構文150」(1988年初版 美誠社)というものを学校一括採用でサブ教材として使用したことがあるのではないでしょうか。もはやレジェンドと呼ばれるこの構文集は、大学受験生のみならず、広い用途での英作文力アップに有効なアイテムとして有名です。

「構文」というと、有名なものは「分詞構文」「強調構文」、それに変化球では「くじら構文」なんてのもありますね。これら構文を、”読んでわかる”レベルから”使いこなす”レベルに昇華させると、あなたの英語表現はネイティブ目線でも随分とこなれたものに映ります。

日本語の作文がうまいと感じるとき、おそらくそう感じる理由は書き手の言葉のチョイスなのではないでしょうか。一方英語においては、どんな単語を選ぶかということよりも、どんな「型」を使って書くかが書き手の力量に対する第一印象を大きく左右します。もちろん語選にも目が行くものですが、どんなに背景・状況にふさわしい単語がチョイスされていようとも、それをつたない「型」で書いてはとても稚拙な文章に映ってしまうのです。英作文力アップのためには、「構文」は決して避けては通れない道だということです。
たまには無生物主語、たまには「, which」で補足説明、たまには否定語を先頭にした倒置表現…、こうしてさまざまな表現バリエーションを用いることで、全体がとても洗練されていくわけです。

そのため、英作文の教材の多くがこの「構文」にフォーカスしています。特に、参考書タイプのもの(問題量をなるべく抑えて、講義中心のもの)にその傾向が顕著にあらわれています。与えられた日本語を、英語の「構文」のどれにあてはめて英語訳出するのが最適かを詳しく解説してあります。日本語を眺めているだけでは思いつかない英語ならではの「型」の発想を、少しでもスムーズにできるようになるための工夫が随所に散りばめられています。

また問題集タイプのものは、どんどん数をこなして、書き慣れていくことに目的が特化されています。このため参考書よりはレベルが上になります。問題集においてはもちろんゼロベースで英語を書かせるわけですから、英語のどの「型」を使うのかは誘導がなく、正解も1つに絞り切れず、別解が2つ3つ掲載されていることが多いですね。個別添削を受ける前に、ぜひ問題集を利用することをおすすめします。

そこまで神経質に「型」を覚えて書かないといけないの!?

不思議なものですが、スピーキングもライティングもどちらも同じアウトプットであることに変わりはないのに、ことさらライティングつまり英作文のほうは、文法や構文の「バリエーション豊かな」運用力に重きを置いてトレーニングがなされることが多いです。
スピーキングではクイックレスポンスと語彙力で、ある一定のレベルまではどんどん向上していくものですが、目に見えずただ通り過ぎていくだけの言葉だと「同じような言い回しばかりしている」ことがさほど気にならないものです。まあ、ネイティブの聞き手としては多少なにか感じるところはあるかもしれません。それでも、「外国人だから仕方ないか」と寛容に流してくれるでしょう。

これに対して、書いて残るものについては、似たような表現の羅列はタブー視されます。同じ「型」の多用も読んでいてリズム感がないですし、同じ単語を2回以上繰り返して使うことは特定の目的がない限りはNG視されています。
パラフレーズが常識の英文ライティングにおいて、バリエーションのないのっぺりとした文面は、外国人が書いたものだからといって甘く見てもらえないのが現状です。場合によっては、教養がないとすら思われかねません。こうして厳しいジャッジが下されることを前提に、やはり英作文教材で「型」をどんどん運用する力をつけることは必要と言えます。
スピーキングとライティングには、ネイティブからの”期待度の格差”があることをぜひ読者のみなさまにも知っておいていただきたいと思いました。

いかがでしたでしょうか。教材制作の立場から、いくつか英作文対策のコツを述べさせていただきました。お読みいただきありがとうございました。

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