海外に移住する前は、複数の子ども英会話スクールに7年ほど勤めていた私ですが、多くの保護者の方から様々な質問や相談を受けました。
中でも入会前によくあった質問が、母国語である日本語への影響。赤ちゃんの親子クラスや未就園児のクラスの保護者の方によく聞かれた質問で、「言葉も話せなく、理解もできていない月齢の子どもに英語を取り入れて、母国語の習得が遅れるのではないだろうか?」という質問です。
私の意見を先にお答えすると、早期英語教育は子どもの母国語習得の遅れに悪影響を及ぼすことはないと思います。むしろ幼い内からの英語教育は言語習得において大きなメリットがあると感じています。「早期英語教育」をテーマに、バイリンガル家族を持つ友人の体験談や私の実体験などを踏まえて、その理由をお伝えします!
国際結婚した友人のお子様たちの体験談から感じたこと
私の周りには、日本人とアメリカ人、日本人と中国人、台湾人とフランス人のカップルなど、日本に住む国際結婚をした友人が何組かいます。どの友人もパートナーとは母国語が異なり、子どもには自分の母国語とパートナーの母国語、どちらの言語もちゃんと理解して、使えるようになってほしいと思っていると話していました。
友人達の体験談をまとめると、保育園や幼稚園に通い始めた2、3歳ぐらいの年齢の子どもにとって、学校で使っている言語が自然に出てくる言語になっているものの、家の中で使用している他の言語も理解しているということでした。日本の英語インターナショナルスクールに通っている友人のお子さんは英語を多く発言しているようです。日本の保育園に通っている台湾人とフランス人のカップルの子どもは、家でも基本日本語で話していると教えてくれました。
しかし、それぞれのバイリンガル家族で共通しているのが、親の母国語の語りかけに対して、理解を示しているということでした。どの友人も、お家では話しかけや、何かを促したりする際、自身の母国語で子どもと接していて、特に問題なく意思疎通が取れているそうです。どちらのカップルの子もバイリンガルを通り越して、トライリンガルと、3か国語が日常の生活の中に存在しています。
つまり、子どもは無意識に「場所」と「言語」の使い分けができていて、自然と出てくる言葉は、普段の学びの場である保育園、幼稚園や学校と言った「自分の生活の中心」となる場所で使用している言語ということになります。そして、お家で使用している言語に対してもしっかりと聞いていて、自発的に発言しないものの、理解をするレベルまではできているとのことでした。しかし、小学校中学年や高学年になった時に、複数の言語を母国語のように話せるかどうかということが、友人家族の悩みのようです。
この疑問に対して、私の経験をお伝えします。私は日本人の両親を持ち、父の転勤に伴い、小学2年生から中学2年生の6年間をアメリカで過ごしました。平日はアメリカの現地校に通い、土曜日の週1回は日本人学校にも通わせてもらっていました。家での言語はもちろん日本語です。海外へ行っても、私が母国語である日本語を維持できたのは、家と日本人学校の場があったからだと思います。
帰国してからも、高校卒業まで英会話スクールに週1回1時間程度のレッスンを受講し、アメリカの友人とメールのやり取りをしたり、洋画や洋楽を聴いたりと、英語を日常生活の中に取り入れていました。そのおかげか、久しぶりに小学生時代のアメリカ人の友人と会った時には「アメリカにいた時より英語上手くなっているね!」と褒められたこともありました。
生活の中心となる場所で使う頻度が多い言語が子どもにとっての「第一言語」となり、それ以外の言語で耳にする機会があれば、無理なく聞き取りや理解が出来るレベルまでは習得できるようです。しかし、話すようになるまでのレベルに達するには、子どもがその言語に対して苦手意識がなく、また発言する機会がある環境を与えてあげることの大切さを実感しました。
そもそも人間はどのようにして言語を習得しているの?
人間がどのように母国語を習得しているかご存知ですか?生まれたての赤ちゃんはまだ目が発達しきれていなく、視界がはっきりと見えるわけではなく、なんとなくシルエットとして認識できる程度です。しかし、聴覚は生まれる前から、つまりお母さんのお腹の中にいる時から発達していて、聴覚に優れているのです。
例えば、あるママが赤ちゃんに語りかける際に必ず「ママと一緒に寝ようね」や「ママにちょうだい」など「ママ」を付けて語りかけをしている内、「ママ」という音、つまり単語をインプット(記録)しているのです。そして、自分の口で音が発せるようになると、インプットした音を出してみます。その時にママやパパのリアクションから、自分が発した「音」と「タイミング」が合致したと認識すると、自信をもって、どんどんと発言していくようになり、言語を習得してきます。
幼い内から様々な言語の「音」を聞かせるメリットとは
大人になってから外国語を勉強する際、苦手意識を持ちがちな分野は「リスニング」ではないでしょうか?これは私の実体験なのですが、小学生時代をアメリカで過ごしていたこともあり、幼い頃から英語と日本語を使う習慣がありました。現在は国際結婚を経て、ノルウェーに移住し、ノルウェー語を勉強しています。ノルウェー人の主人や先生からは、「英語とノルウェー語は似ているから、英語が話せるのであれば、すぐ話せるようになるよ。」と言われました。しかし、文法の構造は似ているのは確かですが、「聞き取り、発音」の壁に苦戦しています。例えば、英語と日本語の母音は5つ(a,e,i,o,u/あいうえお)あります。ノルウェー語は9つあり、「あいうえお」に対して微妙に違う音が4つもあります。
幼い頃から耳にしていない音は、自分の頭の中にインプットされていないので、聞きとることがとても難しいのです。このことを考えると、小さい内から様々な言語の「音」に触れることは、デメリットではなく、大きなメリットがあるのです。
無理のない日頃の語りかけが大切!
幼い頃から出来るだけ多くの言語の音をインプットさせてあげることが大事だとお伝えしましたが、継続的に行うことが大切です。そのためには英語環境に置かれる子どもも、その環境を用意してあげる親にも「無理のない習慣」を取り入れることを心掛けましょう。
上記では、言葉を発せない月齢の赤ちゃんが、聴覚を通して言語習得を行っているとお伝えしました。一緒に生活しているママやパパ、周りの人が発した言葉は、子どもにとっては大きな情報源になります。子どもは知らないことがたくさんある分、たくさん覚えることが出来ます。
ここで、ぜひ活用してもらいたいのが絵本です。絵本は動物や乗り物など様々な物を手軽に見せてあげられる「情報の宝庫」です。絵本の絵を指さしながら、「ワンワン、dogがいるね!ワンワン!dog!」と語りかけてあげましょう。
例えば、お子さんが犬を指しながら「ワーワー」など発話できたら、「ワンワンだね!dogともいうよ!言えるようなったんだね、すごいねー!」と発話できたことを褒めてあげましょう!何かが出来るようになったら、そこを褒めてあげ、自信につなげ、たくさん実践してくれるよう促します。その実践によって、いつか「ワンワン」だったり「dog」が言えるようになるのです。外出の際にも、絵本で見たものを見つけたら、お子さんに声かけをしてあげてくださいね!
まとめ
国際結婚をした友人達や私の体験談から、多言語を赤ちゃんの段階から導入させることが、母国語習得の妨げにならないこと、また継続的に習慣として取り入れ続けることで、聞き取る能力に加え、発話の能力にもつながることをお伝えしました。
英語に自信のないママパパも、英語のCDやYoutube、ビデオなどを使って、一緒に楽しく英語に触れてみてください。ママパパが楽しんでいる姿を子どもが見ると、子どもも自然と楽しんでくれますよ♪