世界には仕事をする上で変わった習慣や働き方をしている国があります。
時には日本とは全く違う習慣や働き方に驚かされますが、日本も見習うべきところがあるかもしれません。
今回は特に働き方改革が進んでいると言われるヨーロッパの変わった習慣、働き方などについていくつか紹介したいと思います。
フランスのつながらない権利
欧米では、「Right to Disconnect(つながらない権利)」と呼ばれる労働者の権利が法律によって定められている国があります。
これは、仕事をしていない時間に仕事に関する一切のメールや電話に返信・返答しなくても良いという権利です。
近年は、ITテクノロジーの発達により、どこでも場所を選べずに仕事をできるようになった一方で、仕事をしていない時間にもメールや電話がかかってきたりして仕事とプライベートの境目がどんどん薄くなっています。こうした時代背景の中で、従業員のプライベートな時間を守る目的で法律が定められた国があります。フランスやイタリアなどがその例です。
今では欧米を始め、世界でこのような動きが広まりつつありますが、元々は2001年でフランスの最高裁が出した「労働者が家で働いたり、仕事場に仕事で使うファイルや道具を持っていく義務はない」という判決や、2004年に「従業員が仕事外の時間に電話に出ないのは不品行ではない」といった判決を出したのがきっかけとなっていると言われています。
その後、国会などで議論され、つながらない権利について定めた「El Khomri Law」という法律の中の「Adapting the Labour Law to the Digital Age(労働法のデジタル時代への対応)」という条項が2017年に施行されました。
イタリアでも同様につながらない権利が法律の中で定められています。
ドイツでは法律では定められていないまでも、会社がそういったポリシーを設定しています。例えば、自動車会社のフォルクスワーゲンは2011年に午後6時から午前7時までメールサーバーを停止するというポリシーを作ったり、ダイムラーは休日中に送ったメールが自動的に削除されてしまうようなソフトウェアを導入したりしています。
このように国で導入されるケースの他、企業で自主的に導入するケースも存在します。テクノロジーの発展によって出てきた比較的新しい労働に関する課題ですので、今後も導入する国や企業が増えていきそうです。
スウェーデンのコーヒーブレイク
スウェーデンには「Fika(フィカ)」という文化があります。主に休憩をとることや単にコーヒーを飲むことを意味しますが、お菓子を食べたりジュースを飲んだりすることも含まれます。
フィカの文化は19世紀頃から始まったと言われており、コーヒーという意味の「kaffi」という単語が語源となっています。「kraffi」という文字が入れ替わって「ffika」となり、さらに「f」を取り除いて「fika」になったと言われています。また、スウェーデンの歴史の中でコーヒーが禁止されたことがあり、当時は隠れてコーヒーを飲むために「kraffi」という単語を使わずに「fika」という別の言葉を使っていたそうです。
スウェーデン人は、仕事のときにこまめに休憩をとることが生産性を上げるという考えを持っています。そのため、スウェーデン人にとって仕事中のコーヒーブレイクは重要となっています。
このフィカは通常は毎日何度か行います。15~30分程度のコーヒーブレイクなのですが、単に休憩するという目的だけではなく、同僚や友人などとの重要なコミュニケーションの場となっています。
通常のフィカとは、仕事中の休憩時間といった位置づけですが、スウェーデン人はコンセンサスを得ながら仕事をするスタイルと言われており、そのような文化の中でフィカとは上司、部下、同僚などと知識や意見を交換する場としても機能していると言われています。
スウェーデンの紹介サイト「hejsweden.com」によると、スウェーデン人は年間9.5日の時間をフィカに費やしているそうです。それくらい、スウェーデン人の間ではフィカの文化が定着しているのです。
フィンランドのサウナでのミーティング
フィンランドではサウナは人々の生活の中で非常に重要なリラックスの時間となっています。
フィンランドの人口約5.5百万人に対して、「Bustle」というオンライン雑誌によると、3.3百万もの温室やスチームルームなどのサウナのような部屋が家やオフィスなどに存在します。平均的な人々は週に最低1回はサウナに行くと言われています。
なぜそもそもフィンランド人はこんなにもサウナが好きなのでしょうか。
フィンランドではサウナは友達や家族と一緒に心身共にリラックスする場所で、贅沢なものではなく必要不可欠なものとして考えられています。
フィンランドのサウナの歴史は諸説あり、紀元前7000年頃に存在していたという説もあります。
フィンランドの歴史の中でサウナは宗教、病気の治療、洗体、リラクゼーションなど色々な目的で使われてきました。フィンランドでは昔からサウナが生活の一部になっており、一人でリラクゼーションのために入ることもあれば、他の人達と一緒にサウナに入って親睦を深めたりするのです。
そんなサウナが大好きなフィンランド人は仕事関係の人達とサウナで人間関係を構築したり、サウナでビジネスミーティングや交渉の続きをすることもあるようです。普通の国では上司や部下、同僚、取引先など仕事関係の人達とサウナに行くことはまず考えられないと思いますが、フィンランドでは珍しい事ではありません。
フィンランドの軍隊や国会でもこのようなインフォーマルなミーティングを取り入れており、フィンランドは国会議事堂の中にもサウナがあるくらいです。
ただし、サウナでのミーティングのデメリットとしては、海外から来たサウナでのミーティングに慣れていない仕事関係の人をサウナに連れて行ってしまい、困惑させてしまうことがあるようです。
アイスランドの育児休暇
アイスランドは出産・育児に対する補償が手厚い国です。例えば、出産費用・健診料はほぼ全て国の税金によって賄われています。
アイスランドでは手厚い育児休暇制度が導入されており、また男女平等に力を入れているアイスランドならではの制度となっているようです。アイスランドは世界経済フォーラムの男女平等に関する調査で常にトップとなっている男女平等の国なのです。法律で、組織の中で男性・女性の割合を一定以上に定める「クオータ制」を取り入れており、そのために企業のトップや政治家にも女性が多いです。
そんなアイスランドの育児休暇制度では9月の休暇を取得でき、子供が生まれたら母親、父親がそれぞれ3か月の休暇を順番にとり、その後更に3か月の休暇を取ることが出来ます。最後の3か月は母親・父親どちらがどのように休暇を取るか自由に決めて良いものとなっています。この休暇期間の給料は80%支払われることとなっています。こういった制度の目的としては、両親が等しく子育てについて学べるということと、子供と両親との関係構築といったものがあります。
また、9カ月の休暇を12か月に更に延長するというアイディアが国会で議論されています。この法律が可決されれば、前出の「3か月の両親それぞれの休暇+3か月の両親がどのように休みを取るか好きに選べる休暇」ではなく、「5カ月間の両親それぞれの休暇+2カ月の両親がどのように休みを取るか好きに決められる休暇」という形になるようです。
アイスランドではこのような手厚い制度によって、男女が平等に育児をすることや育児の後の職場への復帰がしやすいようになっています。
いくつかヨーロッパの仕事における面白い習慣、制度、働き方をいくつか紹介しましたが、基本的にはいずれも仕事の効率を上げたり労働環境を良くするような習慣や取り組みであると思います。
幸福度やワークライフバランスが良いと言われているヨーロッパの国のこのような習慣や取り組みに日本も学べるところがあるかもしれませんね。