現代社会にはびこる「ストレス」、これは間違いなく世の中のすべての人が感じているものでしょう。肉体的なもの、精神的なものも含めて、不快と感じるものは広く「ストレス」と表現されるわけですが、人にそれを英語で説明するときに毎度同じ表現になってしまっていませんか?
毎日異なる場面、異なる原因で人は「ストレス」を感じるわけですが、同じような言い回しばかりしていては、本来は多様であるはずのあなたのストレスは一律同じようなものにしか聞き手には受け取ってもらえません。より実のあるコミュニケーションのためにも、あなたの「ストレス」をぜひ適確に表現してみましょう。
まず辞書で「stress」を引いてみよう
そもそも、私たちがふだん使っている「ストレス」という言葉は、もともと「stress」という語のもつ意味のごく一部分にしかすぎません。英和辞典であらためのその意味をチェックしてみましょう。(以下、研究社「英和中辞典」より抜粋)
【名詞の stress】
1.(重みでかかる物理的な)圧力,重圧 〔on〕
2.(精神的な)圧迫感,ストレス,精神的重圧
3. a.圧迫,強制
b.緊迫,緊急; 緊張
4.強調,力,重み,重点
5.強勢,語勢,力点,アクセント
【動詞の stress】
1.〈…を〉強調する
2.〈…に〉強勢[アクセント]をつける
3.〈…を〉緊張させる[DISTRESS の短縮形]
意外に悪役ばかりでない「stress」の語釈
さあもうお気づきの方も多いでしょう。上記にざっと並べられた語義からは、必ずしも悪いばかりのニュアンスではないことが感じとれるはずです。そう、「ストレス」と日本語で書き表されるときには決まって悪役になりますが、もともと英語の「stress」が持つ意味はきわめてニュートラルなものです。重みがかかるという物理的な現象を表すにしても、ただ重くて苦しい・耐え難いという以前に、ただ純然といくらかの重みがかかっているということです。精神的にかかる重みについても、本来はニュートラルな意味合いです。しかし、この語の使用頻度や場面でどうしても統計的にマイナスのニュアンスになりがちだというだけなのです。
実際に、ご自身の身のまわりを振り返っていかがでしょうか? たとえば「緊張を味方につける」「ハリのある生活」「刺激に満ちた人生」などという言葉があるように、ただ平穏な毎日がだれもが目指すべき理想の人生かというとそうではありません。適度な精神負荷はむしろ好ましいわけで、ストレスゼロのような非現実的な状態を目指すのではなく、ときに気持ちをうまく発散させたり、逆に集中すべきときに集中してあえて緊張状態に自分を持っていくなど、ご自身のありかたを工夫していく必要があるのではないでしょうか。
英語でどんなふうに「ストレスあり」の状態を表現する?
そうは言っても、やはりみなさんの念頭にあるのは「ストレスが溜まっている自分」の姿でしょう。友達や家族、恋人には、つい愚痴をこぼしたくもなりますよね。心を許せる相手には日本語であれやこれやと細かい状況説明ができるものですが、英語だとどうしても決まった表現の一辺倒になりがちです。(ノンネイティブにとっては当然ですが仕方ありません。)
以下にいくつかのバリエーションを記しました。伝えたいニュアンスに少しでも近づけるよう、状況に応じて使ってみてください。
【表現例①】(自分は)○○でストレスがあるんだ
まず、○○のところにストレスのもととなる「原因」が来ます。そう、stress factor(ストレス要因)と呼ばれるものですね。仕事でも失恋でも、それこそ寝不足でも、なんだってあてはまります。
I’m stressful by ○○. I have stress from ○○. I’ve had stress arising from ○○. I’ve been feeling stressed because of ○○. I’m under stress associated with ○○. I’ve been under a lot of stress caused by ○○. I found myself stressed due to ○○.
【表現例②】(自分は)ひどいストレスを抱えている状態なんだ
こちらは上に比べて状況が悪化しているときによく使う表現例です。日本語訳からもより緊迫した空気を感じとっていただけるかと思います。
I am stressed out by my ex-husband. (元夫のことで憔悴しているのよ) My job stressed me out. (仕事でストレスがひどいんだ) I am overwhelmed by stress from the disaster. (例の災害で受けたストレスがひどくて、どうにも立ち行かないんだ)
【表現例③】ストレス値が上昇しているときには何て言うの?
さてこちらは、まさに今ストレスが蓄積している途中である、というときに使う表現です。
I feel my stress has been building up so quickly. (みるみるストレスが溜まっていくのが自分でもわかるんだ) My marriage stress has been accumulating gradually but steadily. (じわじわと、でも確実に結婚のストレスが蓄積していくのよ) Basically I am a stress carrier but these days I feel I just can’t take it anymore. (もともと僕はストレスを感じやすいんだけど、最近はどうにもこうにも限界っぽいんだ) Mr. XXX exhibit signs of stress more often. Is he alright? (XXXさんが前にも増してストレスの兆候を見せるんだけど、彼、大丈夫かしら?)
【表現例④】超便利! ひとことでズバリ言い表すとこうなる
こちらはぜひそのまま覚えてくださいね。名詞として暗記してしまうと会話でもスムーズに引き出せます。
stress at school(学校でのストレス) stress at work(仕事のストレス)[職務内容や過労] stress in the workplace(職場でのストレス)[環境や人間関係など] stress of caregiving(介護ストレス) stress during pregnancy(妊娠期間中のストレス) stress caused by disaster(被災ストレス)
【表現例⑤】ストレスでこんな病気に…!
あまり考えたくありませんが、過度のストレスは確実に体を、そして心をむしばみます。最近は「キラーストレス」なんて言われているように、死に直結するような重大な病気をも引き起こすことが判明されました。まずはストレスにまつわる心身の不調を表す英語表現を、いくつか覚えてみましょう。(これらがあなたにご縁がないことを祈ります。)
stress depression (ストレス抑うつ) stress disorder(ストレス障害) stress gastritis(ストレス性胃炎) stress insomnia(ストレス性不眠) stress fracture(疲労骨折) stress dermatitis (ストレス性皮膚炎) Post Traumatic Stress Disorder (心的外傷後ストレス障害、PTSD)
【表現例⑥】ストレスに対処せよ
さて、こちらも日常会話でよく出てきそうですね。日々のストレスとどのように付き合っていくか、それは幸せな人生を送るためのコツのようなものだと筆者は感じています。素直に「ストレスを抱えている自分」の存在を認め、何が原因かを見つめ、冷静に1つずつ自分ができることから対応をとっていきましょう。
原因への直接のはたらきかけが難しい場合は、ストレスの原因じたいがなくならない代わりに、なにか別の手立てでストレス軽減やストレス発散をしていくようにしましょう。親しい人に聞いてもらう話が愚痴で終わらないように、ぜひあなたなりのストレス対策法も相手に共有してあげてくださいね。前向きなボキャブラリーをこちらに共有させていただきます。
relive stress(ストレスを和らげる) reduce stress(ストレスを減らす) work off stress(ストレスを徐々になくす) de-stress(ストレスをなくす) stress control(ストレス制御、ストレスのコントロール) stress coping(ストレス対処法) stress management skill(ストレス管理能力) stress inoculation(ストレス免疫) Stress Inoculation Training(ストレス免疫訓練、SIT)[認知行動療法の1つ]
ストレスとうまく付き合いながら、あなたの毎日が輝かしいものになりますように!