一見すると、詩とラップは別々のものに思えますが、実はラップは現代の詩でもあるのです。英語のラップは聞き取りこそ難しいですが、歌詞をじっくり見てみると、センチメンタルなものがあれば、共感を呼び起こすものもあります。つまり、エモの塊なのです。今回は詩的なラップの歌詞で英語学習をしましょう!
Grown Up – Danny Brown
まずはダニー・ブラウンの ”Grown up”。grown up の意味は「大人」という意味。歌詞は大人になったDanny Brownが、過去を振り返るという何ともエモい内容。歌詞にストーリーがあるため、読み進めながら共感する部分を何度も見つけられるでしょう。例えば、以下の部分。
Used to have baby lungs, choking when I hit it 以前はタバコを吸ったらむせてしまう赤ん坊の肺だった Nowadays lace a whole seven in a sitting 最近は、くつろぎながら7グラムのドラッグをしている Remember back then we thought we growed up 自分たちが大人だと思っていた時期を覚えているか Rushing as a kid just to be grown up 子どもが大人になろうと急いでいた時期さ Rushing as a kid just to be grown up Whoever thought I'd be the greatest growing up? 子どもが大人になろうと急いでいた 俺がこんなにすごい大人になると予想していたやつはいたか?
【単語解説】
used to – 以前は~していた
lungs – 肺
choke – 息がつまる、むせる
hit – 麻薬やタバコを吸う
nowadays – 最近
最初の、「タバコを吸い始めた時期のむせかえり」と「今では麻薬を吸っている」の対比が印象的ですよね。誰もが、子どもの頃は早く大人になりたいと思っていた時期があると思います。大人の視点から、その時期を振り返ってみるラップです。
4r Da Squaw – Isaiah Rashad
Squaw はアメリカ合衆国南部で使われる単語で、「チーム」や「仲間」という意味があります。この曲は、息子として、父親としての責任を果たすためのIsaiahの苦悩などが書かれた曲です。
By the beer, by ear, by boo – what Yari saying? You ain’t nothin' but a baby, your fear is growin' up Yariはなんていったんだ?ビーア(ビール)?イアー(耳)?ブー? お前はただの赤ん坊だろ、お前の恐怖は成長している。 Listen here I say my dude and what you call it It was heaven at the bottom and peace from throwin' up いいか、俺はDudeと言ったんだ。それをお前が聞き間違えた。 底についたとき天国にいるような気分になるが、ピースのために投げ捨てる
【単語解説】
fear – 恐れ
grow up – 成長する
dude – おまえ
bottom – 底
throw up – 捨てる
Isaiahはアルコールやドラッグに関する問題を持っていました。お酒が底をついたとき、彼は天国にいるような気分になりますが、1つだけ恐れがあったのです。それが子どものYari。
赤ん坊だと思っていたはずのYariは、今では話すことを学ぼうとしています。Yariは父親がビールを何度も何度も飲む姿を見て、つたなくBeerと言ったのでしょう。その時、Isaiahは「俺はDudeと言ったんだ」とごまかし、恐怖を覚えるのです。その恐怖こそが、子どもが成長しているということ。
父親としての責任を自覚し、天国にいるような気分になる酒を Throwing up(捨てる)決意をしたのです。
Cocoa Butter Kisses – Chance the Rapper
チャンス・ザ・ラッパーが幼少期を思い返している歌です。ココアバターキスとは、彼の母親がいつも与えていた甘くて優しいキスのこと。タイトルだけで、もう秀逸ですよね。でも、大人になりタバコやドラッグを覚えたチャンスに、ココアバターキスが与えられることはなくなったのです。
Cigarettes on cigarettes, my mama think I stank I got burn holes in my hoodies, all my homies think it's dank タバコの臭いが染みついた俺をママは嫌がる タバコでパーカーに穴をあけちまった、仲間は葉っぱだと思っている I miss my cocoa butter kisses I miss my cocoa butter kisses あのココアバターキスが懐かしいよ ココアバターキスをもう一度してほしい
【単語解説】
stank – 臭い
get burn – 燃やす
hoodie – パーカー
miss – 懐かしい
いや~、エモいですよね。このパートだけでも、チャンスの心情が伝わってきます。純粋無垢な少年時代とは異なり、チャンスはタバコや葉っぱを吸い、母親はその臭いを嫌がっている。状況が異なる今でも、かつて母親がくれたココアバターキスを思い出しているのです。
私たちも、ときおり母親の料理や行動、愛情などが懐かしくなりますよね。これは母親への愛情を示した、優しく温かい、そしてどこか切ないラップソングです。
All Girls Are the Same – Juice WRLD
1988年の新星ラッパーJuice WRLD。この曲は、ロマンスについて歌ったものであり、曲のタイトルは「女の子はみんな一緒」という意味です。女の子に感情を振り回されるラップは、新しいですよね。歌詞を見ていきましょう。
All girls are the same, they're rotting my brain, love Think I need a change, before I go insane, love All girls are the same, they're rotting my brain, love Think I need a change, before I go insane, love 女の子はみんな一緒さ、彼女たちは僕の脳をダメにさせる、ラブ 変化が必要みたいだ、おかしくなっちまう前に、ラブ 女の子はみんな一緒さ、彼女たちは僕の脳をダメにさせる、ラブ 変化が必要みたいだ、おかしくなっちまう前に、ラブ
【単語解説】
rot – 腐敗させる、ダメにする
brain – 脳
insane – おかしくなる、クレイジー
これまでのラッパーは、いつでも好きなときに女性と関係を持てるというような歌詞を作っていましたが、これは素直な感情を表していますよね。「女の子はみんな一緒」はネガティブなニュアンスよりも、「どの子にでも恋をすればおかしくなる」とポジティブなニュアンスを感じ取れます。愛のある関係だけを求める素直で美しいラップ。
まとめ
ラップというとドラッグやギャングなどのイメージがあると思いますが、そんなことはありません。今回紹介したように、詩のように美しい歌詞もたくさんあります。ラップはスラングから日常英単語まで幅広く学べるので、ぜひラップの歌詞で英語学習をしてみてください。