留学生の送迎という仕事

体験談
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国際交流に携わるさまざまな仕事がありますが、そのなかでもあまり知られていないものに「留学生の送迎」という仕事があります。筆者はときどき成田空港と羽田空港に留学生をお迎えに行ったり、また逆に帰国の際にはホストファミリー宅から空港に送り届けたり、そういったアルバイトを不定期におこなっています。どんなことをするのか興味を持っていただいた方に、以下詳しく仕事内容をご紹介いたします。

ひとりで行けないものなの?

 確かに「なんとかなる」と大らかに構えているタイプの留学生ならば、外国といえどどんな状況でも立ち回れるのでしょう。ましてスマホがある世の中ですから、地図アプリでなんとか目的地まで自力で到達することもそんなに難しいことではないのでしょう。しかし、旅行と違って留学やホームステイという目的で来日している場合は、「きちんと/着実に/安全に」が重視されるため、あえて送迎スタッフをつけて留学先の寮やホストファミリーにバトンを渡すようになっているのが一般的です。フライトの遅延や公共交通機関の乗り換えミスなど、これらは頻繁にあることなので「連絡役」としても送迎スタッフの動きは期待されているというわけです。留学生はまだそこまで日本語が流暢ではありませんから、いざというときの日本人スタッフが必要ということです。

仕事はどんなふうにして決まるの?

 送迎スタッフの手配はそれ専用のエージェントがおこない、筆者のようなアルバイト登録スタッフに月末にまとめて連絡が行くようになっています。エクセルでずらりと、何月何日にどこの国籍の誰々さんが、〇〇空港発/着、フライト番号XXXXXのような何十行にも及ぶリストがメール添付で送られます。この中から、自分の都合に合うものだけ「可能です」と返事をして、本部で調整されたあと最終的なオファーとしてあらためて連絡が来るというふうになっています。月によっては1度も出動できないときもありますが、それはそれで仕方なしと本部に寛容にしてもらっているのでクビになることはありません。そのため登録人数は多いと言えます。

拘束時間はどのくらい?

 さて、これが意外と長いのです。実際に留学生と接する時間というのは2~3時間程度ものなのですが、それに前後で加わる「持ち場までの(or持ち場からの)自分の移動時間」を含めると4時間ほどになります。場合によっては5時間を超えることだってあります。ずばりこれば自分の住まい、それから留学生を迎えに行く場所(送り届ける場所)との距離の関係によりますので、あまり今回はおいしくないな…と感じた場合は無理をせず「できます」と返事はしないことにしています。仮に東京に住んでいる送迎スタッフであれば、神奈川県にお迎えに行き、千葉県にある成田空港まで送り届けるなんてのは悲劇です。真逆方向への大移動ですから。あくまで近くに住んでいる人でカバーし合うのが基本的な本部の考え方なので、登録スタッフはなんと関東圏だけで300人にも及ぶんです。

いくらぐらい稼げるの?

 はっきり言って、あまり良いとは言えません。1案件4,000円(税込)、ここから源泉徴収もされますから手元には3,600円程度しか残りません。時給に換算にして絶対1,000円は下回らないように、距離と時間をうまく計算しながら自宅から door to door で4時間以内に収まるような案件を受けるようにしています。春休みと夏休みはトップシーズンで、毎日のように仕事があります。午前と夕方で2件こなす人もいるくらいです。
 なお、飛行機の遅延など不可抗力の場合は、自分もそれだけ拘束時間が延びますので、本部に報告をすればその分だけのお給料は出してもらえます。また、留学生に会う前/別れた後の移動時間は言ってみれば自分ひとりで移動しているだけのプライベート時間のようなものです。そこで読書しようがスマホでネットサーフィンしていようが、お給料が支払われているのはありがたいことだと筆者は感じています。
 もちろん経費として交通費は全額支給されます。留学生と一緒の場合は、全席指定の成田エクスプレスや京成スカイライナー、リムジンバスに自分も一緒に乗り込むわけですが、自分ひとりの場合だと経費節減のため一般のJRなどで移動するのがルールです。
 いずれにしても上記の料金体系やルールは、あくまで筆者の登録しているエージェント独自のものだとご理解ください。

英語力はどのくらい必要?

 アルバイト採用のときには、英語力はちょっとした日常会話程度が必要とありました。本人も過去にホームステイや留学の経験があればなおよし、とのことでしたが、実際にそこまで英語は頻繁に使いません。日本語を勉強しに来る留学生のみなさんは、日本語での会話を望んでいます。
もちろん彼らの日本語の会話力はペラペラではありません。知っている日本語の単語を並べてなんとか意思疎通をはかろうとしてくる彼らにぜひ根気よく付き合ってあげたいものです。こちらが英語でカットインして「こういう意味?」なんて尋ねては失礼です。自分も英語がまだスラスラと出てこなかった時代を思い出すと、相手が辛抱強く聞いてくれたことのありがたみが身にしみます。

ウェルカムボード、使います

 あなたも頻繁に空港で見るアレ、「ウェルカムボード」はこの仕事に必須のアイテムです。空港で待ち合わせるときは、到着ロビーで両手をなるべく高い位置でキープし、留学生の名前とフライト番号、また手配したエージェントの社名が書かれたボードを背伸びするようにして上方へ突き出します。10分を超えてくると、なかなかつらいものがあります。お迎え軍団の人混みの一番前に位置取りできれば、ボードは胸の前でそっと持つだけで済むので、この疲労の差は大きいですね。このボードがないと、「この人が自分の担当の留学生かな…」と思う人に「○○さんですか?」と声をかけても、正しい名前の発音かどうか確証がないのでそれは無意味です。英米式発音をしない名前の場合は、どんなにアルファベット読みをしてもそれは正しくないからです。筆者の場合はほとんどのケースで、予測した発音と全然違う名前でした。アジアやアフリカの留学生がそうです。
 ほかに、地下鉄の駅などで待ち合わせする場合にも同じようなウェルカムボードを使います。ホストファミリーの家の最寄り駅などにお迎えに行く場合ですね。この場合は、こちらから相手を探しに行く姿勢でいなくても、自分はただボードを持って突っ立っているだけで相手に見つけてもらえるので、心理的な負担がとても軽いです。

飛行機のチェックインの手伝い

 空港へ送っていくときには、航空会社カウンターでチェックイン手続きを手伝い、出国ゲートに入るのを見届けてから任務終了となります。このチェックイン時によくあるのが、飛行機に預ける荷物の重量オーバーです。日本に来るときにはほとんど空っぽのスーツケースでも、何か月も過ごしているうちに荷物がどんどん増えてしまうわけです。特大のスーツケースにパンパンに詰め込むと30kgになることもあり、たとえば2kg超過ごとに〇〇円といった金額をカウンターで支払わなければなりません。筆者もこれは経験があり、香港で半年留学して帰ってくるときの荷物が大幅にオーバーし、その場で18,000円も支払ったことがあります。決して安くない金額です。少しでも支払額を減らすために、スーツケースの一部を機内持ち込み荷物にするなどの荷さばきを一緒に留学生とおこなうのも仕事のうちです。
 さらにもう1つ、「あるある」なのが木刀の梱包です。浅草や日光など、観光名所のおみやげ店には必ずと言っていいほど並んでいるのが木刀です。日本刀風の傘なんてアイテムもあります(持ち手部分がサムライ風の柄になっているタイプです)。これが男子留学生には大人気! ホストファミリー宅を出るときには、もちろんスーツケースに入らないのでそれをそのまま持って空港までやって来るわけですが、航空会社のチェックイン時には引っかかってしまいます。使いようによっては、一応これらは凶器ですからね。これを無事に手荷物として機内に持ち込めるように梱包を手伝ってあげるのも、実はこの仕事の隠れた「あるある」なんです。空港内には有料でセロファンのぐるぐる巻き梱包サービスというのが存在します。機械の台座の上でスーツケースがくるくると回って、テープに巻かれているのをご覧になったことがある方も多いのではないでしょう。そうです、このサービスを利用するんです。無事に梱包が済んだら、いよいよ出国ゲートへ向かいます。

 こんなお仕事もありますよ、というご紹介でした。英語をあまり使わないという点が意外だったかもしれませんね。日本の「ここが好き」「あれを食べたい」など留学生との話にも花が咲くので、今いちど日本のよさを知るのによい機会です。もしご興味があればこういったことを扱う会社をリサーチ&応募してみてくださいね!

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