前記事でお伝えしたように、LCCという格安の旅客航空会社群の台頭で海外旅行が安く実現することとなりました。数年に一度のぜいたくだった海外旅行も、年に一度、いいえシーズンに一度という高頻度で可能になることだってあります。
そんなおいしい話があるの…? と未搭乗者にはナゾだらけのLCCですが、大丈夫です! 以下のレポートをお読みになって、どうぞ安心してご搭乗ください。
安全でないんじゃ…?
これは「安かろう悪かろう」の発想ですね。無理もありません。偏見だけでなく、実際に乗った人からも「揺れたよ~!こわかったよ~!」なんて聞くので、いっそう不安が増すことでしょう。まあ、確かにときどき揺れます。なぜなら小さな機体だから、揺れは感じやすいのです。ただ、これは感じ方の問題であって、安全基準としては大きな機体のものと変わりありません。機体が小さいということは、収容乗客数も少ないということです。いざというときの避難は、人数が少ないほうがかえって早くて確実なんじゃないでしょうか。
設備としては、当たり前ですがシート下に海難時のライフジャケットがしまってありますし、酸素ボンベも降りてくるようになっています。離陸直後にCAさんからそれらの「使い方説明」があるのも、大手航空会社と同じです。また、乗り物酔い用の紙袋も備えられているので、この点も大手航空会社と同じです。小さな子ども連れでもまったく問題ないでしょう。
安いのはなぜ? (1)荷物を預けるのが有料
では1つずつ「安さの理由」を検証していきましょう。まず1つ目に、チェックイン時に飛行機に荷物を預けると有料となります。大手航空会社は20kg程度の荷物ならば無料で預けられますが、LCCとなるとこれが重量別(多くは3段階設定)で有料となります。各社5,000円から15,000円ぐらいの幅です。この預け料を払うのが惜しくて往復ともに機内持ち込みの手荷物だけで乗り切る人もいれば、行きだけは預けず、帰りにはお土産でかさばる荷物を預けるという人もいます。
スーツケースは意地でも使わず、ボストンバッグに荷物をパンパンに詰め込んでいる人を多く見受けるのもLCCの特長でしょうね。圧倒的に機内持ち込み派が多いので、席上にあるコンパートメントにはボストンバッグが溢れ返り、ふたが閉まらなくてCAさんが困窮するなんてのもよく見る光景です。機内には早めに乗り込むのが吉です。最終搭乗時刻ギリギリまで機内に入らなければ、もはや自分の荷物スペースはないと考えたほうがよいでしょう。
安いのはなぜ? (2)機内食が有料
ふだんは「機内食ってまずいよね」とブーブー文句を言いながらも、なんだかんだフライト中に楽しみなのが飲み物のサービスだったり、機内食だったりしませんか? そうやはり、あるとないのとでは大違いなのです。機内のさりげない娯楽である機内食は、LCCにおいては注文制となります。1食1,000円程度で3種類ほど用意されていますが、なかにはカップラーメンが400円、大サイズのクッキーが250円、という小食系もあります。コーヒーは1杯300円が相場です。家族連れで4人分も注文したら大変なことになります。
大手航空会社の場合だと機内でアルコールが飲み放題になるのが筆者にとっては最大の喜びなのですが、LCCで3杯も飲めば2,000円になってしまいます(おつまみは大手航空会社と同じで自動でついてきますが)。こんな狭い空間でわざわざ有料でお酒を飲むくらいなら、おとなしく筆者は我慢します。耐えかねたあとの現地での1杯は、極上の味ですよ。
安いのはなぜ? (3)TVモニタがない
フライト時間が短いなら問題ありませんが、3時間を超えてくると地味にこたえてくる問題です。とにかく機中が暇なんです。大手航空会社の機内だと、最新の映画や音楽を提供してくれるなどのサービスがありますね。ゲームだってあります。現地のガイドブックを読むだけではすぐに終わってしまい時間を持て余しますから、そんなときは思い切って睡眠に徹するのもよいでしょう。
LCCはアメリカ大陸やヨーロッパなどのような長距離区間を飛びませんが、それでも東南アジアだって7時間はかかるわけです。空港で文庫本を1冊買うなど、なんとか時間の使い方には事前に気を配っておきたいものです。ノートPCを持ち込んで作業するにしても、電源コンセントがありませんので要注意です。音楽番組とイヤホンはありますからご心配なく。
安いのはなぜ? (4)シートピッチが狭い
これは前にも横にも狭いということです。椅子のリクライニングも少ししか倒れませんし、シートのフカフカ度も大手航空会社に比べたら若干硬いです。フットレストも当然ありません。ただ、短いフライト時間ならば十分に対応可能でしょう。安いならでは我慢のしどころとして至極当然だと言えます。
まああえて言及するなら、隣に座る人が見ず知らずの人であった場合に、物理的な距離の近さが気になるということはありますね。友達や家族と一緒に乗るならば気にならないと思いますが、知らない人と距離が近いのは一般的には不愉快ですよね。椅子の左右幅が狭いだけでなくアームレストも細いですから、ここは互いに鈍感力を発揮してフライト中の気まずさを乗り切りましょう。
ちなみにあなたの体格が大きめだと、LCCでの移動は実際に体に負担がかかるでしょう。LCCで7時間ものフライトに乗るならば、やはり小柄なほうが有利です。身長が180cmもある大型の男性の場合だと、おしりから膝頭の距離に対して、シートピッチがかなり狭く感じることは確実です。脚を組み替えるのも頻繁におこなうことは難しいでしょう。脚を組み替えるときに膝が前のシートを確実にこするため、何度もおこなうと前に席っている人にも振動が伝わり不愉快な思いをさせてしまいます。前の席の人がもし気の短い中国系のおじさんだと、「エイっ!」なんて怒られてしまうかもしれません。
安いのはなぜ? (5)毛布がない
女性には大敵、機内の「冷え」の問題があります。大手航空会社の場合は毛布がはじめから用意されており、CAさんに希望を出せば枕だって持ってきてもらえますよね。ところがLCCでは、毛布は1枚1,500円ほどで「販売」されているんです。つまり回収してクリーニングに出すシステムもないということですね。夏場の旅行だとしても、LCCで行くなら一枚なにかしら羽織りものを持参することをおすすめします。機内はエンジンを冷やす目的もあり冷房がガンガンに効いています。旅行中の体調管理は大切ですので、あまりの冷えに耐えられないならば意地を張らず、毛布の購入に踏み切りましょう。背に腹は代えられません。
安いのはなぜ? (6)購入後のキャンセル不可
残念ながら、いったん購入したものはキャンセルや変更が利きません。ただしこれは大手航空会社でも、格安でチケット購入をした場合には同じようなことがあります。エコノミー1席を予約するにしても、倍ほど金額に差がありますよね。案内される席は同じエコノミーですが、どうしてここまで金額に開きがあるのか不思議に思ったことはありませんか。これは実は「予約クラス」の差なのです。マイルの貯まり方やキャンセル/変更の扱いに差があるわけです。
この点、LCCのエコノミー席はよほどの例外を除けばキャンセルも変更もできない仕組みです。旅行日程が不確定でもチケットだけは押さえておきたいという方は、LCCのプレミアムエコノミー席やビジネスクラス席で予約することをおすすめします。ゴージャスな席になるぶん価格は高くなりますが、キャンセルや変更のポリシーが寛容です。(そもそもエコノミー席しか用意していないLCC会社もありますが。)
さて、ご覧になっていかがでしょうか。上記6点の「安い理由」を踏まえて、それでもOKという方はぜひLCCに乗ってみてくださいね。低価格で、たくさん、旅行に出ましょう!