韓国はご存じのとおり、日本から一番近い外国です。お住まいの地域によっては、沖縄に飛ぶよりむしろ韓国に飛んだほうが近い、なんてこともあるでしょう。韓国とは当然「韓国語」の国ですから、これまで英語学習の点ではノーマークだったかもしれませんが、ぜひ今後の手軽な英語学習先として視野に入れていただけたらと思います。
英語で日常的なコミュニケーションをするなら、必ずしも英語圏でなくてOK
ネイティブ並みの英語話者になることを目指していないのであれば、英語を使う機会にさえ恵まれれば学習環境は「どこだってよい」と筆者は強く感じます。極端な例ですが、日本国内で英語オンリーの2週間合宿に参加するなんてのも全然アリでしょう。
さて、それでも「国外」にこだわる学習者の方が大多数だと思います。自分を追い込むためにもあえてステイ先に国外を選ぶというのは正しい選択でしょう。とにかく日本から一歩踏み出せばそこはもう日本語のテリトリーではありませんから、否応なしに現地語か英語でコミュニケーションをとっていくしかありませんね。ゆえに、韓国はチョイスの1つと筆者はとらえます。英語圏ではないのが気になりますか? まあそうですね、通訳や翻訳、それに英語の正確性を求められる職種に将来的に身を投じたい方にはおすすめしませんが、そこそこ流暢に「英語で言いたいことを言える」のを目標にしている場合ですと、治安も不安定な遠いところにあえて大枚をはたいて留学やホームステイをしなくてもいいかなと個人的には思います。
で、5泊の韓国ホームステイをしてきました
内心ドキドキしながらも、筆者には上記のポリシーがあるので「娘たちに初歩レベルの英語を身につける」という目標を掲げて、8歳児と5歳児を連れて韓国ソウル市内にホームステイをしてきました。娘たちはそれぞれ、小2と幼稚園年中です。2人をインターナショナル幼稚園に通わせている(いた)ものの、彼女たちの消極的な性格も手伝ってふだんから英語の会話のほうはあまり長く続きません。とにかく海外に連れ出して、日本語の通じない環境とはどういうものかをわかってもらいたかったんです。
韓国語ですが、筆者はまるで知識がありません。娘たちだって、これまでの短い人生のなかで韓国語なんて聞いたことすらないでしょう。すると必然的に「英語」がコミュニケーション手段となるわけです。ステイ先も英語が堪能な家庭だと事前にわかっていたので、これはいい!と思い迷わず予約に踏み切りました。モジモジした娘たちに、超簡単レベルでも英語を「続けて発話する」機会を与えたいと思っていましたから、これはまさに希望どおりと言えます。
どうやってステイ先を探したの?
宿泊予約サイトBooking.com で見つけた今回のステイ先ですが、検索絞り込みのところで「ホームステイ」にチェックを入れます。そのうえで検索に引っかかった宿から、値段や清潔さなどそれぞれ重視する観点でさらなる絞り込みをかけていくのです。そこにはさまざまな形態のホームステイがあります。実際にはB&B的な単なるゲストハウスのこともあれば、本格的なホームステイ体験を提供してくれる場合もあり、面倒でも繰り返し相手方に確認をしていけば必ずどこかであなたの希望するスタイルにありつけます。
ホストファミリーとつかず離れずの距離をお望みならば、食事は毎食ごとに放っておいてもらえるようなところがいいでしょう。また、トイレとお風呂を誰かと共用することに耐えられないのであれば、各居室にトイレとシャワールームが設置されていることが必要条件ですね。キッチンやダイニングは、ゲスト用の独立設備なのか、ホストファミリーと共有するのか、こちらも確認は怠りなく。現地での快適さに大きな開きが出てくる大事な要素です。
どんなホストファミリー?
筆者のステイ先の家族は、いわゆる上流階級の人たちでした。彼らの経営している宿は「○○ゲストハウス」という名前でしたが、トラディショナルな「韓屋」と呼ばれる建築様式の築浅のお宅でした。ゲストハウスなんてずいぶん謙遜した名前をつけたもんだと思いました。かつて夫婦で有名高校の英語教師だった60歳代の方たちと、その息子さんで英語/韓国語/中国語の翻訳職に就いている40歳男性の3人家族でした。行き先は韓国といえど、英語を使う環境としては完璧ですね! 彼らの職業は予約前メッセージのやりとりで明らかになったわけですが、こちらから連絡をとる前にほかのお客さんのレビューに対する返信英文を参考にすれば、相手方がどの程度の英語力なのかはだいたい把握できます。文法的にきちんとした英語を返していることが確認できたので、あとは設備の確認だけして予約を完了させました。また、wouldやcouldをうまく使いながら相手におしつけがましくない言い方をしている文面にも好感が持てて、ここならゲストへのおもてなしをきちんとしてくれる! という予感がしたので、出発前の不安は一切ありませんでした。
部屋はどんな感じ?
筆者が娘たちと寝泊まりした部屋は5畳くらいの広さで、ベッドではなく布団でした。同じ布団文化のある日本人にはまったく問題ありませんね。そして、扉は引き戸タイプのいわゆる「ガラガラ」です。なんとも和室に近い、不思議な感じでした。寝室のすぐ隣には、ホストとゲストの共用する居間がありました。居間と寝室の間には廊下を挟んでいないので、すぐ隣にホストの息づかいが感じられる「あたたかみ」がある間取りでした。ホストファミリーどうしでは韓国語で話しているので、ときどき「アイヨー」「アイゴー」なんて扉越しに聞こえるのもまたよかったです。その一方で、居間のテーブルには「The Korea Times」が置いてありますから、彼らはほぼバイリンガルなんでしょう。
さてキッチンについては、ホストとゲストで共用でした。キムチを作るときには子供たちも参加させてもらい、ビニール袋にきゅうりや大根を入れてモミモミ…、これはホテルステイでは得られない体験です。きゅうりを包丁で切るときに、「Chop, but carefully.」や「Hold like this.」のような短い英会話があったのも、娘たちがまさに生活の中で英語を覚えることになり筆者としても大満足です。
トイレとシャワールームはゲスト用に個別に用意されていましたが、バスタブがなかったため「お風呂に入りたければ私たちのところで」と言ってくれました。お言葉に甘えて、娘たちはホストのバスルームを借りました。湯温の調節や、シャワーと通常蛇口の切り替えの説明などの会話を通して、彼女たちもホストから英語表現をどんどん吸収していったものと思われます。「このバーを右にまわしてね」というときに「Turn it to the right.」と言われました。上の娘は「ん?右に曲がるの?」なんて勘違いしていましたが、妹のほうがすんなり解釈できていたため、さすがに悔しかったようでその後はやる気に火がついたようです。なお別の場面で、瓶のふたが開かなかったときがあるのですが、ここでは「turnではなくtwistがふさわしい」という感覚を身につけることができました。あっぱれ、英語圏でなくても、ホストが英語を話す人ならばここまでできるのです!
幼稚園児でも参加できるのが、ゲストハウスならではの魅力
ところで日本人は昨今、英語の早期教育に熱心になりましたね。小学生になってしまえば、春休みや夏休みに「寮生活+スクール」形式のプチ留学体験が数多く用意されています。ところが、幼稚園児向けのプログラムというのはほとんどありません。あったとしても、ハワイのプリスクールで午前中3時間だけの預かり保育、午後はフリープラン(=つまり子供は親と過ごす)、のようなものです。高額なわりに英語学習の時間が少ないので、わが子が小学生になるのを待ってからプログラムに参加させる親御さんが一般的です。
しかし、小学校に上がるまでまったく海外での英語経験をゼロにしなくても、今回の筆者のようにゲストハウスに泊まることを選択肢の1つとしてとらえていただければ、せっかく英語を習っている幼稚園児もインプットとアウトプットの両方の機会が得られてよいと思います。
韓国人の英語力
日本と同様、韓国でも国全体で英語習得に力を入れるようになりました。それでも、全体的な底上げの成果が出るまでにはしばらく時間がかかるようで、現実的には英語力には大きな個人差があるようです。経済力のある家庭は、将来に備えて英語ができるよう国内外問わずに子供にお金を投じます。状況としては日本とあまり変わりばえしませんが、韓国で「とても」英語ができる部類の人たちが多く出現し、韓国全体のTOEICやTOEFLの平均点を彼らが引き上げていると言えます。
日本で言うところの大学入試センター試験のようなものが、韓国にもあります。毎年11月に実施されるのですが、ここにかける意気込みが日本とは比べ物にならないほど大きく、ゆえに大学受験をする人たちはクレイジーなまでに学業に励みます。英語ももちろん受験科目の1つなので、英語だってクレイジーなまでに勉強します。文法だけでなく、時代にあわせて4技能まんべんなくこなしているのがすごいところです。日本人の受験層に比べて韓国人の受験層のほうがよりシビアな競争にさらされていることからも、大学進学者の英語力が総じて高いのも納得ですね。日本人の大学進学者の一部はきっと韓国と同じくらいシビアな競争を経験しているのでしょうけれど、その他大勢は言葉は悪いですがどこかしら「のほほん」としているのではないでしょうか。少子化で「大学全入時代」と言われる日本において、韓国と同じくらいホットな英語学習熱は芽生えようがありません。
韓国英語村
こちらは余談ですが、「英語村」という言葉を聞いたことがありますか? 期間限定の「英語のイマージョン環境」を提供するプログラムで、狭義にはいわゆる合宿やキャンプを指します。ロッジでのステイでなくても、場合によって寮のようなところで寝泊まりすることだってあります。
韓国にはいくつも有名な英語村があり、その中でも筆頭にあるのが「パジュ英語村」というもので、政府運営でかつアジア最大級ものです。東京ドーム6個分の敷地内にさまざまな体験型/シチュエーション別の施設があり、全部で750人も収容できるそうです。いろいろな国からやってきたゲストとともに学べるなんてのも、魅力の1つですね。
たった2~3時間で行ける韓国です。辛い料理やK-POPがお好きな方はぜひご一考を! 韓国で英語を学ぶのは、意外とアリですよ!