こんにちは。前記事に引き続き、今回も東京都の運営管理するボランティア活動について述べてみます。筆者はつい最近この活動団体の一員となり、新米としてガイドを始めたところです。どのようにして外国人観光客をアシストしているのか、参考となれば幸いです。
Welcome to Japan! Welcome to Tokyo!
読者のみなさんでサービス業に就かれている方はいらっしゃいますか? 駅や空港などで働く方はもちろん飲食店やホテルでも、年々急増する外国人訪問客を「お・も・て・な・し」すべく、従業員の外国語能力向上が火急の課題となっていることでしょう。いずれの場合も、それぞれ現況に応じてなんとか対応をとっていることと思います。はじめから外国語が堪能な人を雇うというのも1つですし、以前から勤務している人には語学研修を実施するのも1つですね。
おかげで、ほんの数年前と比べてもぐんと東京がインターナショナル仕様になりました。駅での乗り換えや特急券購入もスムーズにできることでしょう。ひとたびレストランに入ったら、「なんだ、意外と英語が通じるんだ」なんて安心してもらえるのではないでしょうか。日本への旅行リピーターであれば、きっとこの進歩を見直してくれるはずです。
目的地に着くまでが大変
ところが、次の場合はどうでしょう。外国人観光客が道を歩いているときに迷ってしまい、自分のすぐそばを歩く誰かに助けを求めたい…などのリアルな旅行者ニーズの場合です。
その状況で助けてあげることができるのは、やはり通行人しかいないでしょう。このとき、「英語ペラペラ」の日本人が通りかかればラッキーですが、実際そうはいきませんよね。そこで、「東京都観光ボランティア」が配置されているわけです! まさに路上で、あるいは観光地のすぐ近くで待機し、かゆいところに手が届くサービスを展開しています。(といっても東京中に配置されているのではなく、特に外国人観光客が訪れる決まった地点を中心に、ということですが。)
旅というものは、移動時間も含めて思い出です。目的地に着くまでの道のりが楽しいものならば嬉しいですし、ちょっとしたトラブルがあってもそれはそれで振り返ると良い思い出となるのかもしれません。しかし、通行人に話しかけても5人連続で「英語はわかりません」なんて逃げられたら、さすがにポジティブと言われるお国柄の人も気持ちが萎えることでしょう。
「東京都観光ボランティア」は、ずばりここのケアに手厚いと言えます。ふつう、観光地に着いてしまいさえすれば、有償無償を問わず現地でのガイドサービスがあるものです。
でも路上にはガイドがいません。そうです、路上こそがまさに旅行者にとっての「助けて!」スポットなのです。民間事業のどこの会社もこのケアをしようとしないので、それならば東京都がやってやろうじゃないか!ということで本活動が始まったのです。
どこで活動しているの?
そうですね、さすがに各駅に配置するほどボランティアの数は多くありませんし、また需要の小さいところで待機していても通行人の妨げとなるので、次のエリアに絞られています。
・上野エリア
・銀座エリア
・浅草エリア
・新宿エリア
・渋谷エリア
・臨海副都心エリア(=お台場など)
いずれのエリアも、交通上でなかなか雑多な面がありますから、観光地としての人気よりも「助けて!」ポイントのほうで選ばれた地域です。
これらのエリアの属する駅は複数の路線が交わっていますし、最後の臨海副都心エリアにいたってはモノレール/電車/水上バスなど交通手段の選択ができます。ガイドなしで最適ルートを選ぶのはなかなか難しいでしょう。渋谷は駅構内をリニューアル中なので、特に今は助けを求められるときでもあります。工事により構内の迂回を求められるなど、日本人ですらスムーズな移動が困難なので、いわんや外国人旅行者をや、です。
いつ活動している? 何時間働くの?
年末年始をのぞく毎週(金)(土)(日)の、10:30~16:30です。各エリア16名体制となっています。平日はサラリーマンをしながら土日はボランティア活動、というパワフルな方も多くいらっしゃいます。
傾向としてはシフトの希望は(土)に集中しますが、運営局がうまく全体をならして整えます。ほかに定年退職したばかりの海外勤務帰りの方や、卒業間際の大学生なんかもいらっしゃいますので、(金)に活動可能な方にはなるべく(金)に入ってもらうなどの処置をとっているようです。英語のスタッフばかりが固まらないように、中国語や韓国語ができるスタッフの配置にも気を配ります。
さて、無償の勤務が10:30~16:30なんて、毎週これだとキツいのでは!? という感想を持たれた方もいらっしゃるでしょうか。いいえ、大丈夫です。あまり詳細は申せませんが、全然ブラックではありませんのでご安心ください。休憩時間も確保されていますし、交通費は1日1,000円まできちんと支給されますし、必ずしも毎週活動しなくてもよいのです。こちらから運営局に、毎月web上で勤務可能日の連絡をおこないます。
勤務可能な(金)(土)(日)が1か月のうち1日もないときだって、たまになら許されます。また1日あたりのシフト時間も実は10:30~16:30の6時間フル拘束ではありません。この時間範囲内のうち、準備や終了報告、それに休憩も含めての4時間拘束です。このくらいだと疲労感もあまりなく、気持ちよく次回活動に向かうことができます。
やっぱり、あの制服着るんですよね…?
升添知事時代に発表された制服が、「ダサい」のなんのと世間にはことごとく不評でしたね…。ニュースでは連日ひどい扱いをされていました。実は筆者も当時、あまり格好いいとは思っていませんでした。ウルトラクイズの司会者さながらの「元気100%感」をうまく着こなせるスタッフと着こなせないスタッフがいたはずです。POPなのは良かったんですけれどね。
あのあと、2017年に新しいデザインに切り替わりました。濃いブルーと黒の市松模様で、なかなかモダンでいいと個人的には思いますよ。目立つのに、印象はぐっとシックになりました。この制服は大きめにガバっと羽織るものなので、下に着る服はなんでも構いません。ただ、銀座エリアだけはなぜかジーパン禁止令が出ていました。(ハイクラスなファッションの街だからでしょうかね。)
ほかには、足元はスニーカーなどのフラットシューズ、かばん類はウエストポーチなど両手がフリーになるもの、帽子とサングラスはNG、これらが銀座エリアを含めた現場での共通ルールです。要は、動きやすくて、相手に失礼に映らなければよいということです。
どんな質問が多い?
ご想像どおり、「○○に行きたいがどう行くべきか?」が最多質問です。地下鉄の駅からなんとか地上に這い出たはいいものの、手元の地図を見ると今どこに自分が立っているのかわからない、なんてのはよくある話です。また次のような質問も多いので、一例として紹介します。
・How can I transfer to Keisei Line? (京成線にどうやって乗り換えればいいのか?)
*JR上野駅と京成線上野駅は離れているので、スーツケースを転がす旅行者には鬼門です。
・Aren’t there elevators in this building / station? (ここにはエレベーターはないの?)
*ベビーカーを押して歩く旅行者は、意外にも多いのです。赤ちゃん連れで海外旅行とはタフですね!
・Where is a sushi restaurant near here? But not expensive ones. (寿司屋は近くにないの? 値段のほうは、そこそこの)
*銀座では特に言われますね。ランチでも価格は1,000円~15,000円とピンキリです。
笑える質問、ベスト3
さてこちらは、思わずププっとふき出してしまう質問のご紹介です。
・Is that Tokyo Skytree? (あれがスカイツリー?)
*浅草の五重搭を指さして言われました。さすがにこれでは低すぎるでしょう!
・I need to go to washroom, but I can’t do any with these pants on…How can I…? (トイレに行きたいけどこの袴じゃちょっと…どうすればいいの?)
*和服を召した男性のお客様だったのですが、ネタがネタなので男性ガイドに引き継ぎました。
・Where is the best place for Kimchi and Bibimbap? (キムチとビビンバが一番おいしい店はどこ?) *ええと、ここは日本ですが?
最後の質問は、笑ってはいけないかもしれませんね。ニッポンの認知度として素直に受け止めました。欧米諸国から見たら、東アジア人はみな同じ顔ですし、違いを認識するのはなかなか難しいのかもしれませんね。
今回は「東京都観光ボランティア」のなかでも、特に「街なか観光案内」という活動に焦点を当ててお話しいたしました。楽しんでお読みいただけたのなら嬉しいです。