英語の早期教育がますます過熱する日本において、「英検Jr.(ジュニア)」は学習到達度の確認指標としてインターナショナル幼稚園や児童向け英語塾などで広く採用されている試験です。もちろん教育熱心なご家庭は個人受験もできますので、どうぞ気軽に受けてみてくださいね。
以下、ポイントごとにみていきましょう。
英検Jr.って何ですか?
「英検Jr.」は公益財団法人日本英語検定協会の主催する幼児・小学生向けの検定試験です。その歴史は比較的短く1994年に最初の試験が実施されました。(2015年4月に旧名称「児童英検」を「英検Jr.」に変更しています。)親試験にあたる「英検」が1963年のスタートなので、「英検Jr.」のほうはまだまだ比べものにならないくらい低い認知度なのですが、小さな子供たちに向けて実施運営される試験としては国内随一のものです。
大きなポイントは2つ。まず、試験はすべてリスニング問題で構成されていること。またこの試験には合否判定がなく、%表示の「達成率」で結果が示されることです。ここで言う達成率とは、つまり正解率のことです。英検Jr. が育成型テストと呼ばれるわけはそこにあります。同じレベルのものを何度か受けて、そのたびごとに実力アップを確認することができるので、英検Jr.にはまるで大人のTOEICのような要素もありますね。
レベルはどの程度?
英検Jr.には、レベルごとに全部で3つの試験が用意されています。初歩レベルに近いものから、「英検Jr. ブロンズ」「英検Jr. シルバー」「英検Jr. ゴールド」となります。
ブロンズ試験は、家庭や学校で身近なことを題材に、あいさつや物の名前、また自分の好き嫌いの表現などに関して出題されます。おもに家庭で英語学習を行っている未就学児童でも気軽に受けられる試験として人気です。
自宅での学習となると、フラッシュカードを用いて単語力のビルドアップをしていくのが一般的だと思いますが、この方法で物の名前や簡単な動詞の意味をジャンジャン覚えていくというので正解です。ほかにNHK番組「えいごであそぼ」などで、あいさつ(How are you?)や簡単な文表現(This is ….)の補強をする必要はあるものの、はじめからあれこれ構えて受験するようにはつくられていません。
繰り返しになりますがこの試験には合否がつかないので、プレッシャーなく親子でトライできます。よってこのブロンズ試験は「はじめて」さんに特におすすめなのです。
シルバー試験になると扱う場面の範囲が広がり、店での買い物や学校の行事、スポーツや余暇なども含まれます。また義務の表現や選択するときの表現など、やや社会性を帯びた内容になってきます。
英検協会によればシルバー試験の想定受験者は、週1回50分の学習を1年以上続けた子供たち、としています。ブロンズ試験で80%以上の達成率をおさめた学習者に、次に受ける試験としてシルバーが推奨されています。
ゴールド試験になると、程度や数量に関する表現も出てきますし、職業のことや外国文化に関することなど、受験者の認知能力や環境に合わせて内容もぐっと進化しています。二人の会話(A→B→A)を聞いて、結論は結局どういうことなのかを頭の中で整理するような問題も出るので、英語力とは別の「整理力」「論理力」が要求されたりもします。
しかし、これは日本語でもふつうに会話の中で起こりますから、特に対策する必要はありません。要はシンプルに話の流れを追っていけば正解できます。さてこのゴールド試験ですが、シルバー試験での達成率が80%以上の学習者に推奨されています。英語学習歴は最低でも2年以上と想定されています。
いくらかかるの? どうやって受けるの?
検定料ですが、ブロンズ試験は2,300円、シルバー試験は2,500円、ゴールド試験は2,700円で、いずれも税込み価格です。ほとんどの受験者がオンライン受験となります。また塾や学校などの団体受験であれば、ペーパー試験版も用意されています。
オンライン版とペーパー版では試験問題を変えてあるので、同じ時期に受験が実施されることがあっても試験内容の漏えいにつながるようなことはまずありません。
なおオンライン受験の際は、保護者の方が受験者に付き添ってあげてもかまいません。ただし、保護者は試験を滞りなく進行することのみに努めましょう。問題のヒントを出したり、聞き取れなかった英語をリピートしてあげたり、まして答えを教えてあげるなんてことは厳禁です! マウスでクリックするなどのPC操作に不慣れなお子さんのサポートに入ってあげるのが、本来の付き添いの目的なのです。
さて申し込みについてですが、やや注意が必要です。ペーパー版が年3回実施、オンライン版は1年中実施ということで、まるで勝手が違います。ペーパー版の年3回実施というのは、親試験「英検」のように1年のうち決められた日時(×月×日)に受けるという意味ではなく、決められた「受験可能期間」が年3回あるということです。
2018年度試験日程では、第1回が2018年6月9日~6月12日、第2回が同年10月27日~11月4日、第3回が2019年2月2日~2月10日となっています。いずれもだいたい3週間ぐらい前が申込締切です。ペーパー版は英語塾などのグループ受験代表者がまとめて英検協会に申し込みをするようになっています。一方でオンライン版は、インターネットで毎日申し込めるわけですが、こちらも指定された「受験可能期間」(おおむね3か月)のうちに必ず受験を終えてください。
個人の受験者でもペーパー版で受けたいという希望があるかもしれませんが、残念ながらオンライン版でのみ受験可能です。
過去問題はあるの?
残念ですが「英検Jr.」の場合は、親試験「英検」と異なり過去問題がオープンにされていません。しかし英検協会のウェブサイト内には各大問のサンプル問題がありますので、どのような問題が出るか不安でたまらない、という場合には間違いなく役に立つでしょう。しかし1回分フルセットを模試のように解いてみたいという学習者は、書店で各出版社の刊行している予想問題集などを購入することをおすすめいたします。
ここで特記事項なのですが、「2013年度実施分より3グレードすべてで、過去問題を使用して出題していく」という方針を英検協会が述べています。つまり、問題をリサイクルするということです。よってペーパー版で受けた人も問題用紙はすべて回収され、どのような問題が出たのかは限りなくブラックボックスになります。
おあとがよろしい「レポートカード」
受験者はオンライン版やペーパー版にかかわらず、試験結果通知としての「レポートカード」を受け取ります。オールカラーのA3横版で、1つ1つの問題の正誤ともに、各大問ごとの評価コメント、さらに山を登るイラストで目標達成への道をビジュアル化しているところがニクいのです。子供心ながら向上心が芽生えて「次はもっと頑張ろう」という気持ちになるのです。(確かに子供が「達成率××%」と言われたところでピンときませんからね!)
お子様はバンザイ! 表彰状とシールがもらえる
こちらがまた英検協会のニクい演出です。表彰状(厳密には「Certificate」という成績証明書)、さらには美しいメダル風シールがもれなく同送されるのです。やや乱暴なもの言いかもしれませんが、結果がなんぼでもまるで成績優秀者への表彰状のような見栄えなので、いわゆる「がんばったで賞」ということですね。それでも子供にとっては、これまでの短い人生のなかで初めてもらう表彰状というケースがほとんどですから、大人が考える以上にこれは嬉しいごほうびなのです。
我が家の娘も公開できるような達成率ではありませんでしたが、この「表彰状」をまるで家宝のように壁に飾って来客のたびに自慢しているわけです。一方シールのほうですが、ブロンズ試験の受験者にはブロンズ色の、シルバーならシルバー、ゴールドならゴールド、と立派な堀り加工の施されたものなので、こちらも演出効果抜群です。
以上、簡単にご紹介いたしました。英語教育に熱心な親御さんたち、いかがでしたでしょうか。
せっかくお子さんに勉強させているのなら、英語に苦手意識をつのらせるよりも「楽しい」と思って学習を継続していってほしいですよね。英検5級を受ける前に、英検Jr. もぜひご検討のほど。
リスニング試験中心であるお手軽さもそうなのですが、例の「ごほうび」が筆者のいちおしポイントです!