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クリスマスにまつわる小ネタ「Boxing Day」

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さあ街はクリスマスムードのピークですね!
キリスト教信者の少ない日本においても、このときばかりはみながこぞって盛大に祝います。いまや宗教を問わず、世界中の老若男女がクリスマスの華やかな雰囲気を楽しんでいます。各種商業戦線も毎年気迫に満ちたあざやかな戦いぶりを見せてくれますね。
今回はイギリスやアイルランドなどの「Boxing Day」(12月26日)にまつわるお話です。

えっ?クリスマスにBoxing?

ネーミングでびっくりされる方も多いことでしょう。ご安心ください、殴り合いをするわけではありません。箱(box)からこの名前が来ています。
起源は中世のヨーロッパにさかのぼります。教会が貧しい人たちへの寄付用にクリスマス・ボックスを設置し、それを受け取り手が開けるのが12月26日だったという説と、12月25日のクリスマスに屋敷で働いた執事や使用人たちに、主人が翌日26日に休暇を支給し、クリスマスの豪華な食事の残りやギフトを箱に入れて手渡したためという説があります。過去に英検3級の長文問題にも「Boxing Day」が題材にとりあげられましたが、その由来については後者の説の立場をとっていました。

うらやましい!12月26日は公休日!

この「Boxing day」は現代においても、クリスマスにカードやプレゼントを届けてくれた配達員たちのための休暇という意味合いから、世界の複数の国々でオフィシャルな休みとなっています。クリスマス需要でてんてこ舞いの佐川急便さんやヤマト運輸さんから見れば、なんともうらやましい話ですね!なお12月26日が日曜日にあたると、その翌日27日が「Boxing Day」となるので、きちんと休みは担保されます。

ちなみに前日25日は、「家族で過ごすクリスマス」という西洋人の価値観が反映されており、街中のほとんどの店が閉まります。こちらは日本でも広く知られている事実でしょう。開いているのはせいぜい、クリスマスは関係のないイスラム系やヒンドゥー系のお店か、ガソリンスタンドぐらいのものです。スーパーマーケットですら閉まります。日・中・韓系列のレストランについて言えば、オーナー次第といったところです。
せっかく自由を求めて海外移住をしているのだから、街のムードに合わせて自分たちも休んでしまおう!という人もいれば、商業チャンスとして1日でも多く経営しよう!と考える人もいます。いずれにしても、続けて26日まで休めるのならば最高ですね。

やっぱりセールでしょ!

女性読者のみなさん、「Black Friday」や「Cyber Monday」という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでようか。 いずれもショッピング業界において一大セール日を表す言葉ですね。これらと同等の知名度があり、さらに割引率はこれらのはるか上を行くと巷で言われているのが、「Boxing Day Sale」です!
クリスマスを家族でほっこりと過ごした翌日は、血気盛んにセールに向かうのが海外では1つのメジャーな過ごし方です。さあ地域別に見ていきましょう。

Boxing Day ~イギリス、アイルランドでは

キリスト教で12月26日は聖ステファノを祀る日であり、イギリスやアイルランドにおいては「Boxing Day」を別名で「St.Stephen’s Day」とも呼びます。この聖ステファノはキリスト教で初の殉職者と伝えられていることから、さぞや人々が粛々と「Boxing Day」を過ごしているのかと言えば、経済大国のイギリスでは決してそんなことはありません!
消費文化の波に乗って、12月26日は万人にとって「ザ・ショッピングデイ」と化しているのです。高級デパートからカジュアルなショッピングモールまでそれぞれ大幅な割引率でセールを行うので、それを目当てに海外からの観光客も絶えません。ハイブランドの「GUCCI」などもセールの対象となるので、ファッショニスタたちにとってはわざわざ行く価値あり!なのです。今やこのセールは、イギリスの「冬の風物詩」としてガイドブックに紹介されているほど大きなものです。

スポーツとも深い関連があるのが「Boxing Day」です。(くどいようですが、ボクシングではありません。)
有名なのはサッカーですが、プレミアリーグから4部リーグまで、12月26日の1日だけで実に100試合近くものゲームが組まれます。サッカーファンにとっては国中のあちらこちらでハイレベルなゲームが行われるわけですから、まさに12月26日は「サッカーの日」なのです。リーグ初日の12月26日からずっとTVに釘付けの父親を持つ子供たちは、年末年始は静かに国内で過ごし、バカンスに出かけるクラスメートをうらやましく思う、というのもよく聞く話です。それにしてもクリスマスの翌日にピッチに立つなんて、選手たちも大変ですね!

Boxing Day ~カナダでは

カナダでも「Boxing Day」のセールはありますが、一部の州ではセール開催日が異なるので注意が必要です。州によって制定されている休みが若干異なるのもカナダならではの特徴と言えます。(ニューブランズウィック州、ノバスコシア州、プリンスエドワード州、ニューファンドランド州の4州は、翌日12月27日がセール開催日。)
それにしても驚くのは、カナダの極寒のなか、イレギュラーに「朝5時」に開店するデパートの前で並ぶ人たち。つまり彼らは夜中の3時や4時ぐらいから並んでいるわけです。地下街に建設されているトロントのいくつかのデパートを除けば、屋外で凍える寒さと闘いながらセールに臨む姿はまさに「決死の覚悟」ですね!

Boxing Day ~オーストラリア、ニュージーランドでは

南半球では、真夏にクリスマスです。オーストラリアやニュージーランドにも「Boxing Day」のセールがあり、人でごった返すショッピングモールはそれはそれはたいへんな熱気で、カナダとは真逆の「汗にまみれた」闘いっぷりが展開されます。自国からの距離の都合から、特に中国系のお客様が多いのだとか。さらにオーストラリアでは返品・交換が比較的たやすいということもあり、「ひとまず買いだめ」と大量購入したのち、合わないものだけ返品するというベテランショッパーもいるようです。

実際にニュージーランド在住の知人が、昨年のセールで有名シューズブランドの「Crocs(クロックス)」をずいぶんお得にゲットしたようです。2足買うと2足目は半額、また3足買うと3足目が無料とのことでした。もともと1足目も70%引きだったようで、3足合わせて破格のショッピングができたわけです!日本でもこのぐらい太っ腹にしてもらいたいものですね。
またショッピングに興味のない男性にとっては、自宅でゆっくりとTVスポーツ観戦ができるのもオーストラリアならでは。世界的ヨットレース「Sydney to Hobart」は、毎年シドニーを12月26日に出航して、1,100km先のホバートまでゴールの早さを競うスポーツです。大晦日がイベント最終日ということで、何日もかけてゆっくりリラックスして観戦するにはふさわしい種目ですね。メルボルンでも「Boxing Day Test」と呼ばれるクリケットの大会があり、その開催初日が12月26日と設定されています(開催期間は5日間)。オーストラリア代表が世界の強豪と戦うシーンは毎年盛り上がりを見せ、世界中のクリケットファンが冬の休暇と合わせてオーストラリアに滞在しに来るほど認知が高まっています。

Boxing Day ~香港では

香港は比較的最近の1997年までイギリスの植民地であったため、イギリス文化を色濃く残す都市です。当然、ここでも「Boxing Day」のセールがあるわけですが、中華圏らしい「真っ赤っ赤×ゴールド」のあでやかなディスプレイが多いのも見どころの1つです。ところどころ漢字表記の看板を見ると、なんとも愛らしく感じます。

さて狭い国土にたくさんの人が暮らす香港においては、この日は交通規制をかけて歩行者天国をわざわざ設ける繁華街も多いようです。チムサァチョイやコーズウェイベイなど国内に限られた数しか存在しない繁華街で、顧客のスムーズな購買活動を促すことは国策の1つです。1人の顧客にいかに多くの買い回りをしてもらうかは、政府が介入するほど経済的視点では重要なことなのです。
なおこの日はやはり香港でも公休日となるので、普段はお手伝いさんつきの香港マダムや日本人の駐在妻たちも自炊せざるを得ず、日系スーパーではレトルト食品や半調理済み食品の売れ行きが平常時よりもよいようです。

最後にプチ学習~boxのように、「へえ~」な動詞たち

最後は、せっかくなので英語学習の小ネタでしめましょう。「Boxing Day」のboxが箱であることが分かり、「ああ、何だ、そうか」とすぐにイメージがつかめたことと思います。box には動詞で「箱に入れる、詰める」また「平手(またはこぶし)で打つ」という意味があります。同じように、よく知っている名詞が動詞で使われる例を以下にご紹介します。

1.cap
名詞ではもちろん「帽子」ですが、これを動詞で使うと「ふたをかぶせる、上限をもうける」という意味になります。英検1級長文問題などでもよく出てくる上級レベルの使い方です。例えば「日本への移民の数を制限する」をcap the number of immigrants to Japanなどのように言うことができます。
2.water
名詞では「水」、他動詞では「(植物など)に水をやる」となります。water the flowers や water the gardenのように使います。自動詞では「(体から)分泌物を出す、(目から)涙を出す」という意味があり、My eyes are watering.「涙が出てきちゃった」、My mouth is watering.「よだれが出てきちゃった」のように使います。これの変形で、ハイフンを使った形容詞mouth-watering「よだれが垂れそうなほどおいしそうな」というものもあります。

さあ、あなたは今年どんなクリスマスを過ごしましたか? よだれが出そうなほどおいしいご馳走を食べて、大好きな人たちと時間を共有されたのならば、筆者もとても嬉しいです。素敵な一年の締めくくりを。メリークリスマス。

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