オーストラリアは、いろいろな国からの移民が多い国です。
そのおかげで、いろいろな国のレストランやお店があったり、それぞれの国のお祭りや風習を身近に感じることができたり、様々な文化を享受できることをオーストラリアは誇りに思っています。筆者もそんなオーストラリアに住む外国人の一人です。
オーストラリアに16、7年住んでみて感じている、オーストラリアで外国人として暮らすということについて筆者なりに考えてみました。
外国人への手厚い言語サービス
日本も最近は、いろいろな言語による街の標識や案内など外国語によるサービスが充実してきましたが、いろいろな言語を母国語とする居住者が多いオーストラリアでは、もっと言語サービスが充実しています。
いろいろな国のニュースをその国の言葉で見ることができ、日本の前日夜のNHKニュースを翌日早朝見ることができますし、いろいろな言語でのラジオ放送もあります。水道代や電気代の請求書にも必ず「他言語でサービスに関するお問い合わせが必要な方はこちらからどうぞ」というような案内が記載されていますし、病院に行く時、妊娠中のケアなど、医療通訳を頼むことができます。
もし緊急に通訳サービスが必要な時は、24時間通訳サービスを利用することもできます。
Department of Immigration and Border Protection(オーストラリア移民・国境警備省)が運営する
TIS(translating and interpreting service)というサービスです。
https://www.tisnational.gov.au/Non-English-speakers/Help-using-TIS-National-services/Immediate-telephone-interpreting-for-non-English-speakers
その番号は、131450
上のご案内ページは、英語で書かれていますが、だいじょうぶです!
同じページの説明上部に言語を選択して聞いて理解する多言語音声ヘルプがあります。
かけ方は、
1、まず131450にかける 2、オート音声ガイダンスに何語の通訳が必要か訊かれるので、必要な言語を答える 3、TISのオペレーターが出たら再度必要な言語を答える 4、オペレーターが通訳を見つける間そのまま待つ 5、オペレーターが希望言語の通訳につなぐ
その際、自分の名前、話したい電話先の団体・会社名、電話先の電話番号を伝えます。
電話をしたい相手の団体・会社がTISからの電話を受け、料金を払ってくれる場合は、無料で利用できますが、相手側が拒否する場合は、ご自身でTISのアカウントを作って、自腹で通訳料金を払って電話をすることができます。
多言語サービスが充実している反面、いろいろな国出身の人がオーストラリアで暮らしているので、英語を話せない人がいても気にならないのと同じくらい、誰でも英語が話せる前提で話しかけられます。お店の人が何人だろうと、特に気にかけることもありません。
「外国人」という垣根が低いというか、あまり外国人を意識することがありません。
オーストラリアかぶれしているうちは、まだまだ外国人
以前、異文化理解について大学で勉強した時のある日の講義が今でも時々思い出されます。
それは、異文化の中で暮らすには、3段階のステップがあるということ。
1、異文化の素晴らしさに興奮し、全面的に異文化を受け入れ、大好きになる段階 2、異文化の欠点がたくさん見えて、自分の出身国と比べては不平をこぼしがちな段階 3、異文化も自分の出身国の文化も両方その価値を認め、受け入れる段階
という3つの段階に分けられるのだそうです。
筆者もオーストラリアに十数年住んでみて、ようやくこの3ステップが見えてきた気がします。いや、オーストラリアののんきぶりについつい怒ってしまいがちな筆者は、まだまだステップ2かもしれません(笑)。
オーストラリアと日本、どちらの文化も受け入れ、どちらの文化もイイトコどりで暮らせるようになりたい、と思う毎日です。まだまだ修行が足りません(笑)。
移民が多いオーストラリアだって、外国人に関する問題は山積みです。移民を許すことは、オーストラリア人の雇用を奪うことにならないだろうか、という不安が差別を生み出したり、移民の人の一時滞在の待遇が劣悪で、移民の国のオーストラリアらしからぬ対応ではないのか、という議論が絶えなかったり…
オーストラリアの移民国としての素晴らしさの陰にある、オーストラリアが抱える外国人問題にも目を向け、公平な目で判断できる外国人になりたいものです。
オーストラリアで差別を感じる時
シドニーなど大きな街に出かけてみると、明らかに中国系の方がたくさん住んでいるとわかる地域やイタリア出身の方が多いエリアなどはっきりと出来上がったそれぞれの人種のコミュニティに出会う機会も多いですが、筆者の住むケアンズは、街自体がこじんまりとしているからか、人種によるコミュニティはあっても、それによって居住区ができあがるようなことがなく、いろんな人がバラバラにいろんな暮らし方をしているので、外国人であることをあまり意識しないで暮らせる街です。
と、筆者は思っていたんですが、ある日、ケアンズに住むモンゴル人女性に会った時、彼女がこんなことを言っていました。
「ケアンズの人は、親切だけど、英語のまだ上手でない外国人に不親切な気がする。」とのこと。
私には、意外な意見でした。うかがえば、オーストラリアに来て3年ほどなのだそう。ケアンズの人は、英語のわからない人に、ゆっくりわかるように話してあげる親切さがないし、新参者だとわかると不親切な対応を受ける、ということを気にされていました。
それで筆者にも思い当たることがありました!例えば…
筆者が、メディケア(日本の国民保険のようなもの)の手続きに行った時にわからないことがあり、質問すると、なんだかとっても不親切な対応で、感じが悪い人だな、という印象を受けていたのが、オーストラリア人の夫が途中からやって来た途端、がらりと態度が変わって親切でした…
オーストラリア人の夫がたまたまいない時に、日本から来ていた両親も連れて掃除機を買いに行った時のこと、この掃除機、ここに出てる以外に箱に入ったものはありますか?と尋ねると、面倒臭そうにバイトの店員の女の子が店の奥に入り、そのまま店員さんは戻っては来ませんでした。
いずれもちょっとしたイジワルですが、受けた方は忘れないものです。当時は、自分が外国人だから、なめられてるんだわ、と思ったものです。
ですが、それは、ちょうどモンゴル人の女性と同じ、オーストラリアに来てまだ5年もしない時のこと。今では、全くイジワルな目にあうこともないですし、みんなとても親切です。
それで思うんです、オーストラリア、特に小さな街ケアンズでは、外国人というより、「新参者」に疑いの目を向けがちなのではないかな、と思います。筆者も、まだオーストラリアに来て長くないだろうな、という人の雰囲気はなんとなくわかるので、地元の人もなんとなく新しくやって来た人がわかるのだと思います。
是非、外国人だから、と気張ることなく、地元の人と積極的に交流してみてください!
仲良くなれば、何人だろうと仲間です。英語ができるできないも気にすることはありません。地元の人が相手にわかるようにゆっくり英語を話さないのは、誰でも公平に扱ってくれているから。ゆっくり話して相手を外国人扱いすることは、親切なようでもありますが、なんだか同等でないような気もしますし。
慣れると、地元の人と言ったって、実は、みんな様々な国のアクセントで英語を話していることに気づくでしょう。